研究課題/領域番号 |
23653290
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
|
キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / 歴史教育 / 政治教育 / 学力 / 教科書 |
研究概要 |
教育上の達成度の低い層に対して歴史教育はどのような知識と技能,態度の獲得を促すべきかという課題に対して,いわゆる分岐型の学校体系をとるドイツでは戦後どのように考えられてきたのかという問いをめぐり,本年は,特に歴史教育学の議論の展開に着目して調査を行った。その際,国内で入手困難な文献については,ベルリンのドイツ国際教育研究所附属教育史図書館に赴き,時代をさかのぼる形で先行研究をたどった。 その結果,昨年度に教科書調査から得られた展望,すなわち1960年前後以降に視野を設定することは教育史的に不十分ではないかという印象を持つにいたった。すなわち戦前の学校も同様の問題に直面しており,そこですでに一定の知見の蓄積があったと推察されるためである。 このことは,同時に,今日の各州の学習指導要領に見られる,低学力者向けの教育課程と高学力者向けの教育課程は,かつて一つだったものが学力差の現実に応じて分化してできたのではなく,反対に,かつては全く別ものだった教育課程が時間とともに共通の目的を持つに至ったのだという理解を要求する。 なお,本研究を進める過程でドイツの数名の教育学研究者と意見交換の機会をもったが,そこからは,彼らにとって,低学力者向けの歴史教育がどうあるべきかという課題は新しい問題であることが確認された。これは上記の理解と一見矛盾するようにも見えるが,おそらく低学力向けの歴史教育は,大学等に籍を置く教育研究者とは別の人々によって進められてきた,つまり二つが別物として認識されてきたことを示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年じゅうに,教科書の分析に一定のめどがついたと考えられたことから,今年度は教科書よりも,教育課程と歴史教育学に焦点をあてて分析作業を行った。その結果,教育課程については,低学力者向けと高学力者向けの学習指導要領のあいだに,教育目標の違いは認められないものの,教育内容・教育方法には明らかな差異があることが明らかになった。また歴史教育学の先行研究の分析からは,昨年の見通しとは違って,1960年代までに視野を限定することは不正確な認識をもたらす可能性があり,戦前の議論に注目することの重要性が理解された。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にしたがって教科書以外の歴史教材・教育プログラムに調査対象を広げる一方,当初予定していなかった,より古い時期の教科書も視野に入れることで,近年の多様な教材の特徴を明らかにしていくことを予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
|