研究課題/領域番号 |
23653300
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
磯崎 哲夫 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90243534)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 科学教育 |
研究概要 |
本年度は研究目的に従い、下記の調査研究を行った。 まず、比較教育学的研究として、韓国及び上海を訪問し英才教育や中等教育段階における創造(発明)教育の実態ついて資料を収集し調査した。その結果、韓国では国の方針により特別学校を設置し科学教育に関する特別な教育が行われていること、上海の創造教育は各学校の方針により科学教育が中心となりながらも他領域の教育も含まれていること、両者の教育では普通教育と同じように人間性の育成も求められていること、などが明らかになった。また、イギリスの中等教育段階における新しい科学教育の動向について、その目的や内容構成などについて分析を行った。その結果、目的に関しては、将来の科学者も含めて市民として必要な科学的リテラシーの育成が目指されていること、内容構成に関しては、後期中等教育においても従前の自然科学のそのものの知識・理解ばかりではなく、「科学がどのように機能するのか」といった科学の本質や科学・技術が関連する社会的諸問題に関する知識・理解やスキルなどの育成が求められていること、大学入学試験でも知識の再生に加えて文脈に合わせた知識の適用なども問われていること、などが明らかとなった。 次に、わが国の科学教育史の流れにおける第二次世界大戦末期・直後の初等学校及び中等学校における特別科学教育について、その実態をカリキュラム構成の原理の視座から分析を行った。その結果、関係する高等教育機関のイニシアティブのもと、校種や実施校、また実施時期により目的やカリキュラムに違いが認められること、科学教育に技術的側面を導入したり、学校によっては創造性育成の観点から自由研究を開設していたこと、などが明らかとなった。 以上の点は、中等教育段階における多様性のある科学カリキュラムの構成原理のための視点となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較教育学に関しては、アジア諸国を中心としながらも、研究計画を一部前倒しにして、中等教育における多様性のある科学カリキュラムを開発し実践しているイギリスについても予備的分析を行った。また、アジア諸国における人的交流を行い、次年度以降の具体的な分析の視点を得ることができた。歴史研究に関しても、わが国の科学教育の歴史的展開の中で特別科学教育を位置づけているために、他の時代の多様性ある科学カリキュラムの分析の視点を得ることができた。なお、実態調査に関しては、理科教師への半構造的面接調査の準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のうち、比較教育学的研究に関しては、次年度は当初イギリスに関する研究が主体となっていたが、本年度の研究の過程において、韓国に関してより詳細な実態調査を行うことが可能となったため、引き続き次年度も実施する。また、歴史的研究では、特別科学教育以外に昭和初期の中学校における科学カリキュラムを調査することで、中等教育に関する多様性のある科学カリキュラムの構成原理を明らかにすることを試みる。実態調査に関しては、理科教師への半構造的面接調査や産業界の求める人物像などを調査し分析することを通して、創造性の育成を意図した多様性のある科学カリキュラムの構成原理について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、特に設備備品のうちでも資料に関わる経費が外国訪問先から提供された。次年度は設備備品のうち特に諸外国の資料や国内の歴史的資料の収集に努める。旅費に関しては当初計画に従って執行する。
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