従来ICTおよびデジタル教材を活用した授業づくりにおいては、電子情報ボードを用いた一斉授業,iPodを用いた一斉授業と個別学習のあり方等の研究がほとんどであり,3~4人のグループ学習およびそれに適した最新のタブレット型情報端末機であるiPad(米国アップル社)を用いた相互啓発のための指導方略のモデル化についてはまだほとんど実践研究がないのが現状であった。そこで本研究では、実践を通してICTを活用した児童生徒同士が高め合い、学びあう「協働学習」につながる授業モデルの構築、学習指導上の留意点を明らかにすることを目的として取り組んだ。 まず授業づくりの前提として、現在の児童生徒がデジタルネイティブ世代のさらに先を行くネオ・デジタルネイティブ世代であることに留意した。実践を通してこの世代はモバイルネットを駆使して、動画情報を自由に操り、言葉より映像・音楽、理性より感性・感覚を重視し、自分にとって気持ちいいかどうか(快楽主義)を重視していることが特徴のひとつであることが確認できた。映像重視、感覚・感性重視の世代といえよう。これらはiPadがツールの機能としてめざす価値とも合致したものである。NHKクリエイティブライブラリーの動画を用いて、iPadをビューアー(閲覧のための機器)として用いると、学習者の対話を促進することが明らかになった。これら実践的な研究を通して得た知見は、教育家庭新聞社の「iPadの教育活用」で全8回の連載で随時発表したが、常にアクセス数もトップを獲得し多くの反響があった。特にiPadを用いた授業評価の4つの観点としての「知識の定着」「学び方の補完」「イメージの拡充」「相互啓発」が多くの実践で活用された。 またiPadミニが登場し、フィールドワーク、特に博物館における現地学習に有効なツールとしての可能性を検討することが今後の課題である。
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