研究課題/領域番号 |
23653313
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鄭 仁豪 筑波大学, 人間系, 准教授 (80265529)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 聴覚障害者 / コミュニケーションモード / 口話 / 記憶方略 / 健聴者 |
研究概要 |
本研究は、視覚的情報を記憶する際、聴覚障害者が使用する主な言語と記憶の際に用いるコード化との関連に焦点をあて、聴覚障害者の視覚的情報処理方略の特徴を検討することを目的とした。具体的には、音声言語を使用する聴覚障害群である口話群9名と、同年齢の音声言語を使用する健聴者群10名の、言語的情報である文字課題と非言語情報であるドットパターン課題のコード化の特徴を検討し、聴覚障害者の情報処理方略の特徴を検討した。 研究の結果、両群は、文字課題では、抑制なし条件に比べて、構音抑制条件下で、再生頻度が低下する傾向が示された。今回の結果は、文字課題を記憶する際、構音抑制による再生頻度が低下する傾向を示唆されており、聴覚障害口話群と健聴群は、言語的情報を記憶する際、音韻ループを働かせることが確認できた。音韻ループは、下位要素である構音コントロール過程によって、言語的情報を音韻的コードに置き換えて処理するメカニズムを持っており、聴覚障害口話群は、言語的情報を処理する際、音韻的コード化方略を用いる特徴があると言える。また、非言語的情報の処理については、ドットパターン課題を実施した結果、抑制なし条件に比べて、視覚抑制条件を課した際に、再生頻度が低下する傾向が示されており、聴覚障害口話群と健聴群は、ドットパターンのような非言語的情報を記憶する際、視空間スケッチパッドを働かせることが確認できた。 本研究の結果、音声言語を主なコミュニケーション手段とする聴覚障害口話群は音声を使用する健聴群と同様に、言語的視覚情報を記憶する際には音韻的コード化方略を、非言語的視覚情報を処理する際には、視覚的コード化方略を用いる特徴を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、記憶の実験使用する材料を作成し、その材料をもとに、同じ音声言語を使用する聴覚障害者と健聴者の記憶の方略に関する実験をし、一定の結果を得ることができた。研究全体の計画としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、音声言語を使用する聴覚障害者の記憶方略を検討することができた。平成24年度には、手話を用いる聴覚障害者の記憶方略を検討する。なお、手話を使用する聴覚障害者は、手話のみ使用者、手話優位口話使用者、口話優位手話使用者、口話手話同等使用者の4つのパターンがあり、様々な対象者のデータを収集するために各地に出向いてデータが収集し、この膨大なデータを効率的に分析する必要がある。また、この分野では、教育活動のための基礎的示唆を与えることのできる貴重な結果であるため、広く公表することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、直接経費として70万円を申請している。内訳は、多様な対象者のデータを収集するための旅費と学会などで研究成果を公表するための旅費として合わせて25万円、実験の補助や得られたデータの分析補助のために人件費・謝金として20万円、研究最終年度につき、研究成果を広く知らせるための報告書やウェブページ作成のための経費15万円、その他消耗品代の10万円である。
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