• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

発達障害の強み(strength)の実験的検証

研究課題

研究課題/領域番号 23653316
研究機関京都大学

研究代表者

正高 信男  京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)

キーワード特別支援研究 / 発達障害 / 認知
研究概要

研究にあたっては、申請者がここ4年来おこなってきている学習支援の対象である約70名の軽度発達障害の子どもに実験の参加を求めるかたちで行った。おなじく申請者の研究室で開発された視覚探索課題を実験パラダイムとして用い、提示刺激にいくつかの条件をもうけ成績を定型発達の子どもと比較することによって、ある場合では発達障害の子どもの方が、探索の成績が良いという結果を得ることで、障害の「強み」をあきらかにしようとする発想で研究を行った。発達障害をもつ子どもは、言語の習得について多かれ少なかれ困難をおぼえる反面、視覚的記憶にすぐれた能力を発揮する。本研究でも、その特徴が如実にあらわれる結果となった。すなわち刺激を提示するモニターの上にいちどの3×3の9枚の写真を提示して、その中から1枚だけ他と異なるものを選択させる課題を遂行したところ、定型発達の子どもの場合に比べて、障害のある子どものほうが、短い時間ですべての写真を一旦こころのなかで記憶にとどめ、それを脳裏で反芻するかたちで、そこから正解となる刺激を選びだすという、通常ではない方略による問題解決の方法をもちいることがあきらかになった。すなわち言語による音韻情報を一時的にプールする能力に劣る面の代償として視覚情報のプールが例外的に発達したものと推測される。この事実をこれからは十分に活用したかたちで、障害児の学習指導をおこなうことが肝要であることが示唆される結果となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

注意欠陥多動障害および高機能自閉症の子ども20名を対象に、わたしたちの研究室で開発した、「視覚探索課題」の成績を比較することで、仮説の検証を行った。
視覚探索課題の実験では、コンピュータの画面に3×3の形で、9枚の写真が提示される。
典型的には、そのうちの1枚がヘビの写真(この1枚をターゲットとよぶ)、のこり8枚は花(これらをdistracter とよぶ)で構成されている。あるいは反対に花がターゲット、ヘビがdistracter になったりする。実験の参加者は、できるだけはやくターゲットをみつけ、画面の上でそれをタッチすることが求められる。そのときの反応時間を実験者は計測し、探索能力の指標とする。
定型発達の場合では大人も子どももおしなべて、1)年齢の増加とともに、検出はヘビも花もはやくなるが 2)ターゲットはヘビのほうが花より圧倒的に見いだしやすい、つまり検出に要する時間が短くてすむ。3)ヘビがターゲットの場合、色の効果はなく、カラー写真でも白黒でもおなじように検出できる 4)しかし花がターゲットの場合、色があるほうが白黒写真より検出にようする時間は短くてすむ、事実があきらかになっている。
この実験パラダイムを応用し、定型発達児20名で実験をおこない、結果を障害児と比較する。成績としてはターゲットである写真をタッチするまでの反応時間を指標とした。

今後の研究の推進方策

わたしたちの研究室である京都大学霊長類研究所認知学習分野では、2004年以来、軽度発達障害の子ども向けの教材の開発を独自に行い、それにもとづいた学習支援の試行を行ってきている。2013年度現在、実践活動の拠点は京都市、名古屋市、犬山市の3カ所となり、支援に参加している発達障害のこどもの数は70名にのぼる規模となっている。それぞれの生徒は原則として週に一度、拠点に設定された場所で専門スタッフにより、60分程度の支援を受け、かつ支援の進行にともないインターネットを介して、家庭でも同一教材を用いて学習をおこなうようになっている。今まで、参加してのち脱落した子どもは皆無である。25年度はこれらのこどもに本実験への参加を求める計画である。

次年度の研究費の使用計画

経費としては、実験状況を記録するための消耗品、謝金は実験補助の雇用、旅費は京都や名古屋での障害児の実験のために計上する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)

  • [雑誌論文] Distinct aging effects for two types of inhibition in older adults: a near-infrared spectroscopy study on the Simon task and the flanker task.2012

    • 著者名/発表者名
      N. Kawai, N. Kubo-Kawai, K. Kubo, T. Terazawa & N. Masataka.
    • 雑誌名

      NeuroReport

      巻: 23(14) ページ: 819-824

    • DOI

      10.1097/WNR.0b013e3283578032.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Soprano singing in Gibbons.2012

    • 著者名/発表者名
      H. Koda, T. Nihshimura, I. Tokuda, C. Oyakawa, T. Nihonmatsu & N. Masataka.
    • 雑誌名

      American Journal of Physical Anthropology

      巻: 149 ページ: 347-355

    • DOI

      10.1002/ajpa.22124

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Premenstrual enhancement of snake etection in visual search in healthy women.2012

    • 著者名/発表者名
      N. Masataka & M. Shibasaki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 2 ページ: 307

    • DOI

      10.1038/srep00307

    • 査読あり
  • [雑誌論文] isual recognition of age class and preference for infantile features:implications for species-specific vs universal cognitive traits in primates.2012

    • 著者名/発表者名
      A. Sato, H. Koda, A. Lemasson, S. Nagumo & N. Masataka
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 7(5) ページ: e38387

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0038387

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi