研究課題/領域番号 |
23653319
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
柳原 正文 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00032219)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 学習障害 / 早期診断 / 尺度開発 |
研究概要 |
本研究は、学校教育を受ける段階で発見される学習障害(LD)を就学前段階で発見し、必要な早期対応を行うことができるために、幼児用LD診断尺度を開発しようとするものである。 研究計画は3カ年にわたるが、初年度の平成23年度は、LDの幼児期における行動特性を測定するための予備的尺度の作成に着手し、その基本構成についてほぼ納得できる段階に到達した。作成にあたっての基本的な考え方は、机上検査ではなく、日常生活の中で捉えられる行動特性に着目し、尺度の生態学的妥当性を重視することであった。このために、まず、就学前教育・保育に従事する幼稚園教諭と保育士から「気になる行動」についての聴き取り調査を行うとともに、保健福祉分野における3歳児、5歳児の幼児検診の際に用いられる項目を精査した。また、記憶、言語などの認知発達におけるつまずきを論じた先行研究の知見も参考にし、予備項目を策定した。 これらの予備項目について、再度関係者に検討を求め、表現の修正や項目の整理を行った結果、29項目からなるチェックリストが作成できた。これを用いて保育士40名を対象に調査を実施し、結果について因子分析を行ったところ、広汎性発達障害や注意欠陥多動性障害とは分離され、LDの予測指標と考えられる行動特性群が抽出された。現在、これらの行動が知的発達の問題とは独立であることの検討を継続している。 一方、尺度の予測的妥当性を保証するために、小学校の協力を得て、在籍LD児を過去にさかのぼって幼児期の行動を探る計画を有していたが、個人情報管理を理由に実施が困難であった。このため、代替の方法で、医療機関との連携により、保護者の了解のもとに出身園で調査を行うことにした。問題点は、医療機関を受診する場合は、広汎性発達障害等の障害を合併していることであり、解決方法を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたチェックリストの項目選定についての基本作業を終了した。しかし、予測的妥当性をどのように保証するかということについて課題は残されている。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定していた進捗状況であるので、本年度には幼児用LD診断尺度の標準化の作業に着手したい。このため、幼稚園や保育園の協力を得て、本診断尺度を定型発達児へ適用して標準範囲を確認するとともに、知的遅滞を伴う場合との比較を通じて「発達の遅滞に伴う項目」と「リスク児に特異的な項目」の分離を図ることにしている。 この計画を進めるために、昨年度の成果をもとに、7月にカナダ・ハリファックスにおいて開催されるIASSID学会において情報を収集する予定である。 また、本診断尺度を臨床場面に適用できるようにするため、チェック項目の一部は日常場面において観察できるような簡易な教材を考案したいと考えている。このため、研究代表者が関わっている岡山大学発達支援相談室において、その実践データを収集することにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費として、カナダ・ハリファックスにおいて開催されるIASSID学会、東京で開催される日本特殊教育学会に参加・発表する予定である。 人件費は、昨年度と同様に、1名を専従雇用して、データ分析・整理、さらには連絡業務に従事させる。 その他は、主として教材作成に要する文具類である。
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