研究課題
初年度である23年度に行った中心的な活動は,11月20~25日に北大で行われた「超平面配置とアローの不能性定理の展開」と名付けたワークショップの開催であった.主たる参加者は,Simona Settepanella(Labo. Economics and Management, Scuola Superiore Sant'Anna,Pisa Italy),Ruimei Gao(東北師範大学,中国),阿部拓郎(京大・工)であった.ワークショップのテーマは超平面配置の理論の社会科学への応用であり,Settepanella,Gao,寺尾の連続講演が行われた.Settepanellaは彼女の先駆的研究を更に推し進め,行動学的な方面に応用を拡げ,GaoはD型のShi配置のsimple-root basisについての新しい知見を報告し,寺尾は[1]について解説した.阿部を中心とした活発な議論を通じて今後の研究の方向が指し示されたと思う.また,ワークショップ後,Settepanella,Gao,寺尾の3名は竹村彰通(東大・情報理工)を訪問し,超平面配置の理論の経済学・統計学・確率論への応用について有益な議論を行った.その際,ポワソン分布と超平面配置の関連についての竹村の指摘は,今後の研究動向の流れを加速すると思われ,来年度以降の研究の進展に期待を抱かせた.[1] H. Terao: Chambers of Arrangements of Hyperplanes and Arrow's Impossibility Theorem. Advances in Math. 214 (2007), 366-378 doi:10.1016/j.aim.2007.02.006
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では,初年度は論文[1]に関して社会科学者の理解を深めてもらうべく努力することが中心だったが,結果的には,北大での11月のワークショップにおいて,SettepanlleやGaoの仕事が[1]を越えて発展していることが伺えたことは,期待を上回るものであった.一方,ワークショップへの社会科学者の参加者が十分でなかったことも事実であり,全体として(2)と評価した.
上記のように,研究の進展という面においては順調なスタートを切っており,次年度以降一層の深化をとげる可能性が高い一方で,社会科学者をどの程度巻き込むかという横の拡がりについてはやや足らざる面もある.しかし,本研究の主旨に鑑み,さらに深く超平面配置の応用的側面を数学的に厳密な手法で掘り下げることを優先しつつ,平行して優れた社会科学者と連携していく計画である.
23年度は11月のワークショップの規模が想定より小さかったために残額321,339円が生じた.この金額は24年度の計画の中では,社会科学にバックグラウンドを持つ有力研究者への謝金・旅費等に用いて,社会科学との連携を強めていく予定である.
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Bull. London Math. Soc.
巻: 未定 ページ: 掲載確定
doi:10.1112/blms/bdr118
``Configuration Spaces: Geometry, Topology and Combinatorics,'' Proceedings of a special period at the De Giorgi Center, Scuola Normale in Pisa, May - June, 2010, Birkhauser
Proc. Japan Acad. Ser. A Math. Sci.
巻: 88 ページ: 41-45
European J. Combin.
巻: 32 ページ: 1191-1198
doi:10.1016/j.ejc.2011.06.005
http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~terao/