研究概要 |
穴空き円板の上のなめらかな abel 多様体の射影的な族があったとき, これを円板上の族に延長するという問題は古くは 1970 年代からいくつかもの試みがあるが, 以下の観点からすると,未だに十分な解答が得られているとは言い難かった. 1. 延長した族が射影的であり, 相対極小モデルとなっているか. 2. 延長した族と元の族の間の関係はどのようなものか? 今年度は六月に研究集会を開催, 5月, 11月および3月に国外で講演をし, それを元に海外の研究者と議論することによって, 元の族の双対族を考察するという新しい視点を得て, それを元に abel 多様体の族の延長問題を考察し, 上記1,2に対する回答を含んだ結果を得た. まず元の族の原点のまわりのモノドロミーがべき単であり, 族が切断を持つという条件を仮定する. この条件は穴空き単位円板の間の有限写像を考え, それによる族の引き戻しをとり, 局所的な張り合わせを変えることで任意の族に対して満たすようにすることが出来る. 一つ目の成果として, 先の条件下で, 元の族の双対族を具体的に構成することが出来た. 二つ目の成果として, この構成を元にして, 元の族とその双対族の底空間が円板となる延長で, 射影的かつ双対極小モデルとなっているものが構成出来た. これらの結果は, abel 多様体をファイバーとするファイブレーション構造を持つ複素多様体で極小モデルとなっているものの構成に役立つことが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ファイバー構造を持つ極小モデルの構成という目標に対して, Fano 多様体の上の abel 多様体の族で, 全空間はとしては小平次元 0 の極小モデルを構成することを目指していたが, その第一歩と呼ぶべき成果は得ることが出来たものの,達成度としてはかなり低いものとなってしまった. もう一件の研究課題の遂行に研究リソースをとりすぎてしまったのが大きな原因と思われる.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は国内外の研究者と交流する目的で研究集会を二回開催したが, 講演をお願いした研究者が予想異常にこちらの旅費の援助を必要としなかったため, 予定していた出費が抑えられた. この余剰金を用いて 6 月に京都, 10 月にフランスで開催される国際研究集会に出席し, 研究連絡および研究成果の発表を行う予定である. また, それ以外でも上記に記したように国内の研究者を数名, 北大に招いて研究連絡を行う.
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