研究概要 |
アーベル多様体の族の相対コンパクト化について成果を得た. 多重円盤と穴あき円盤の直積上に滑らかなアーベル多様体の族があり, なおかつ族が射影的であるものが与えられたとする. このとき, 穴あき円盤の穴を埋めたものは, 全体としては, ひとつ次元があがった多重円盤となるが, この拡張した多重円盤全体に元のアーベル多様体の族を拡張出来るか?という問題は自然なものでありながら, 複素解析幾何の立場からは満足すべき解答はこれまであたえられてこなかった. 昨年度までに, この問題に対し, 与えられた族の双対にあたる族を考え, その族の延長を構成することに成功していたが, 今年度はもともとの族の延長で極小モデルとなっているものを構成することに成功した. こうしたことが可能であることは 1980 年代からある論文において述べられていたが, 満足する証明なしに主張が述べられてるため, この方向のいくつもの研究に不自然な技術的な仮定がつけられた形で止まっているものが少なくない. この成果はこれらの研究成果から技術的な仮定を取り除き, 理想的な形にすることに役立つのみならず, 研究課題であるの主目標の一部である, アーベル多様体をファイバーとするファイバー構造を持つ極小モデルの構成に役立つことと思われる. 具体的な例としてあげられるのは Lagrangian fibration で滑らかなものはこれまでいくつか構成されているが, それをコンパクト化したものが構成出来る, ひいては新しいシンプレクティック多様体の具体例が得られるなどの応用が見込まれる.
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