研究課題/領域番号 |
23654003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
雪江 明彦 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20312548)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 概均質ベクトル空間 / ゼータ関数 / 幾何学的不変式論 |
研究概要 |
本年度は,東日本大震災の影響を大きく受けた. 平成23年度の始めはそもそも仙台から外に出ることが難しく,仙台空港がなかなか復旧せず,ごく限定的に研究者を招いたが,研究集会を開催することはできなかった. 自分の研究は論文という形にはなっていないが,続けている. まず,密度定理の誤差項といったことに関してThorne--谷口の論文を理解し,他の場合について考察した. 明らかになったことは3次体の密度の場合はDatsukovsky--Wright の仕事により局所ゼータ関数が完全にわかっていることがこの場合がよくわかる原因の1つと考えられる. 局所ゼータ関数を調べるためには,p進整数環上の軌道がよくわからなければならない. 幾何学的不変式論のconvexityを使った考察をしたが,論文になるまでにはいたっていない. ただしいくつかの場合には進展している. 例えば,2変数3次形式の空間や GL(2)の標準表現の3つのテンソル積の場合は考察すみだが,これ以外にも 4次の交代行列の対の空間の場合にも同様な考察ができることを確認した. また,3次行列の対の空間は3次体の類数とも関連して非常に重要な場合だが,この場合についての考察を継続した. また,3次対称行列の対の空間も4次体と関連して重要だが,この場合のp進整数環上の軌道が決定できそうである. この他大域ゼータ関数についても GL(2)の標準表現の3つのテンソル積の場合に考察している. この場合は群は階数1の群の積なのでやさしいが,対称性が非常に高く,帰納的に出てくる小さい概均質ベクトル空間の極がすべてアイゼンシュタイン級数の極を通るという難しさを持つが,その打ち消しあいを記述してこの場合の大域ゼータ関数の極の主要部を決定したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,東日本大震災の影響を大きく受けた. 平成23年度の始めはそもそも仙台から外に出ることが難しく,仙台空港がなかなか復旧せず研究集会は開催できなかった. また,大学の復旧作業にも関わり,授業日程も変更になり,夏もかなりの時間を授業に費やした. しかし論文にはなっていないが,研究は進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度も今までの研究を継続していく. p進整数環上の軌道に関してはまだまだ未知の場合があるので,それらを調べる. 特に3次行列の対の空間と3次対称行列の対の空間について現在進行中の研究を続ける. それにより局所ゼータ関数の一様評価を証明したり,あるいは現段階では楽天的かもしれないが,局所軌道ゼータ関数の明示的な表示を計算できればそれにこしたことはない. 3次対称行列の対の空間については特に明示的な計算が可能かどうか調べる. 今後最大の目標は4次体の場合に密度定理の誤差項を計算し証明することである. これについてはふるいの方法がどこまでこの場合適用できるか分析する必要がある. その他にもいろいろな概均質ベクトル空間があるが(4次交代行列の対の空間や6,7,8次元空間の3次交代積の空間, あるいはスピン表現に付随したさまざまな概均質ベクトル空間や,比較的大きな概均質ベクトル空間を調べる際に帰納的に現れるさまざま可約な概均質ベクトル空間)に対してp進整数環上の軌道を決定し,それにより局所ゼータ関数の評価や明示的な計算が可能かどうか考察する. これらの場合に局所密度を計算し,どのような密度定理が期待できるか考察する. またその誤差項に寄与する項の局所的考察を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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