2013年度は、接続のモジュライ空間の構成とリーマン・ヒルベルト対応の幾何学において、一般種数と一般階数の確定特異点の場合の稲場の結果に関する論文と一般の不分岐な不確定特異点の場合の稲場・齋藤の論文が出版され、これらの場合の理論の基礎は確立された.さらに、F. Lorayとの共同研究により、射影直線状の階数2の場合について、安定放物接続のモジュライ空間が二つのラグランジュアンファイブレーションをもつ事を示し、そのファイブレーションが双対的であることを示した論文をオンラインで発表した.また、その時に、下部構造である放物接続の粗モジュライ空間の構造を2次元の場合に詳しく記述し、デルぺゾ曲面の幾何学と結びついている事を示した. これらの事実と、幾何学的ラングランズ対応の関係を現在考察中であるが、D. Arinkinと、この点について討論を行った.D. Arinkinは、パンルヴェ方程式に対応する場合について幾何学的ラングランズ対応を定式化し、示しているが、モジュライ空間の層の直交性が問題であることが明らかになった.この問題と関係のある見かけの特異点の理論については、Budapestを訪問し、S. Szabo と見かけの特異点と接続のモジュライ空間の座標についての論文を完成させようと思ったが、双対座標の定義の困難が明らかになった.この困難のないHiggs場の場合にまず考察する事とし、現在プレプリントを準備中である.Higgs場のモジュライ空間と接続のモジュライ空間とは非アーベルホッジ理論でつながっているが、その点について幾何学的な構造が明らかになりつつある.
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