研究代表者自身が提唱している加群の退化の代数的定義に基づいて、 Cohen-Macaulay 加群の退化の新しい理論体系を構築することは本研究課題の重要な研究目標の一つである。今まで加群の退化は加群圏(アーベル圏)においてのみ考察されてきたが、 Cohen-Macaulay 加群の退化の安定圏における類似を詳しく考察を行い、その結果として、2011年にJournal of Algebra に掲載された論文において、安定圏における退化は従来の退化と密接な関係にあり、実際的計算においては安定圏における退化の方が易しいこと、その結果を用いて従来の加群圏における退化の様子を知ることができることなどが分かっていた。 Proceeding of the American Math. Society に掲載予定の論文では、これら従来の結果を使って、偶数次元のA型の単純特異点上の Cohen-Macaulay 加群の退化の様子を記述するアルゴリズムを得ることができた。さらには有限表現型の完備 Cohen-Macaulay 局所環上の Cohen-Macaulay 加群の退化はすべて Auslander-Reiten 列の退化から得られることが証明できた。
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