研究課題/領域番号 |
23654012
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
島田 伊知朗 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10235616)
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研究分担者 |
高橋 宣能 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60301298)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | K3曲面 / 基本群 / ネロン・セヴェリ格子 |
研究概要 |
K3曲面と格子理論に関する計算機プログラムの開発と改良を行った.とくに,K3曲面のネロン・セヴェリ格子のなかにベクトルが与えられたとき,そのベクトルが数値的にエフェクティブであるか,また偏極ベクトルであるか否かを判定するアルゴリズムを考案し,計算機プログラムを実装した.これによりK3曲面の射影モデルを数多く構成することができる.このプログラムを標数5の超特異K3曲面でアルティン不変量が1のものに適用し,分岐曲線として現れる平面6次曲線のクラスをいくつか発見した.これらの平面曲線は標数5に特有の幾何学的性質を持つ. 複素代数曲面上に曲線の集合が与えられたとき,それらの数値的同値類のなす格子が位相的コホモロジー群のなかで原始的であるかどうかを判定するアルゴリズムについて,アレクサンダー加群を用いる改良を考察した.2012年3月 5日ー8日に,広島大学において,毎年恒例の研究集会「Branched Coverings, Degenerations, and Related Topics」の4回目を開催した.海外からの研究者4名を含む16名の講演者による連続講演と研究発表が行われ,シンプレクティック多様体上のフレアホモロジーに関するFukaya-Oh-Ohta-Ono理論,リーマン面の写像類群の力学系,レフシェッツ束をもつ4次元多様体の位相幾何学,複素射影超曲面の補集合の基本群,などについて議論をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
K3曲面と格子理論についての計算機プログラムを一通り完成させ,標数5の超特異K3曲面に適用することで,計算時間と必要なメモリー量を見積もることができた.超特異K3曲面のネロン・セヴェリ格子は階数が最大なので,これにより,ほぼすべてのK3曲面に対しても適用可能であるという見通しを得た.一方,射影モデルの定義方程式を明示的に求めるプログラムについては,有限体係数をもつものに対してしか開発できていない.ブレイドモノドロミーへの応用に用いるためには,複素数係数の多項式に関する十分早い計算機プログラムが必要である.また,K3曲面以外の代数多様体に対しても,いくつかの応用を与えることができた.
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今後の研究の推進方策 |
複素数係数の多項式に関する十分早い計算機プログラムを開発し,この計算機プログラムを複素K3曲面に適用することで射影モデルを構成する.位相幾何学的に興味深い幾何をもつ平面6次曲線や4次曲面を構成することができると期待される.いままでに得られた結果をもとに,K3曲面の自己同型群を決定するアルゴリズムを開発する.そのために必要な双曲空間の多面体による敷き詰めの研究を進める.計算速度と取り扱えるデータ量についての改良をおこない,多くのK3曲面に適用することで,一般論を構築する.特に,超越格子が与えられたときに,対応する特異K3曲面の自己同型群を決定する方法について考察する.また,K3曲面の自己同型群による力学系とネロン・セヴェリ格子の直交群の基本領域の関連,代数体上定義された特異K3曲面とその素数における還元として得られる超特異K3曲面の自己同型群の差異,などについて実験的研究を進める.Zariski-van Kampenの定理について,代数的ファイバー空間に対するホモトピー完全系列という立場からの高次元化を与える.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究集会「Branched Coverings, Degenerations, and Related Topics」の5回目を開催する.2013年3月にCIRM(Luminy, France)で開催される研究集会"New Trends in arithmetic and geometry of algebraic surfaces"に参加する.
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