研究課題/領域番号 |
23654015
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
栗原 将人 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40211221)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 整数論 / 非可換拡大 / イデアル類群 |
研究概要 |
この研究の目的は、新しい視点から非可換拡大の整数論を構築することである。従来、非可換数論と言うと、類体論の非可換化のことであり、Langlands 予想にかかわるさまざまな領域が問題であった。ここでは、円単数、Gauss 和、Stickelberger の定理などの円分体の整数論の対象物(古典的だが非常に重要な数論的対象物)を非可換化することを目標にしている。昨年度は、A. Nickelによって定式化された非可換Brumer予想について集中的に研究した。このことは、上でのべたことと対応させると、Stickelberger の定理の非可換化を考えていることになる。Nickelはさまざまな拡大に対して、非可換Brumer予想が成立することを証明したが、実際の数値例はあまり持っていない。そこで、まずたくさんの数値例に対して、非可換Brumer予想が成立することを確かめた。Nickelの定理によって保証されない場合の実例も構成した。次に、非可換拡大に含まれる可換拡大のBrumer予想と、非可換Brumer予想との関係を調べた。このことにより、非可換拡大に対しても、非可換Brumer予想よりやや弱い性質が多くの場合に成立することを証明した。また、Nickelが定義した非可換Fitting不変量についてもさまざまな考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に書いたように、いくつかの新しい結果が得られているので、(2)を選択した。しかしながら、非可換Fitting不変量についてもう少し研究を進めることにより、Stickelberger元で非可換Fitting不変量に入らないような拡大が存在することを証明することなど、あともう少しでできると思われることも多い。もう少し進めば、間違いなく(2)を選択できるようになると思われる。その意味で、(2)は選んだものの、(2)と(3)の中間、というのが正直なところであると思う。
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今後の研究の推進方策 |
非可換Brumer予想が成立しているということは、イデアル類群を消す元がある、ということであるので、円分体のときのGauss和の類似について、今年度は深く考えていく予定である。また、D. Burnsによる非可換版の同変玉川数予想を中心にして、この問題を考えていきたい。さらに、Burnsは最近、Brumer予想とGross予想を結びつける研究を行っているので、その方面との関係も研究していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、この分野の専門家であるドイツの A. Nickel 氏かC. Greither 氏を招聘したいと考えていた。しかしながら、震災や電力不足の影響もあり、研究者を海外から招へいすることは中止することになった。今年度は、先方の都合がつけば、 A. Nickel 氏かC. Greither 氏を招へいしたいと考えている。もし招へいできない場合には、こちらから出張することも考えている。
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