この研究の目的は、新しい視点から非可換拡大の整数論を構築することである。従来、非可換数論と言うと、類体論の非可換化のことであり、Langlands 予想にかかわるさまざまな領域が問題であった。ここでは、円単数、Gauss 和、Stickelberger の定理などの円分体の整数論の対象物(古典的だが非常に重要な数論的対象物)を非可換化することを目標にして、研究を行った。A. Nickelは非可換Fittingイデアルや非可換Brumer予想、非可換Brumer-Stark予想の定式化と、この方面で精力的に研究を行っている。特に、非可換Brumer予想は、上で述べたことと対応させると、Stickelberger の定理の非可換化を考えていることになる。まず、Nickelによる非可換Brumer予想と非可換Brumer-Stark予想について、数値例や実例などもこめて詳しく研究した。Abel拡大の場合との違いおよび関係について研究した。また、岩澤主予想を使わず、類数公式だけからどのようなことがわかるかについての研究を行った。この方向で、さまざまな数値例についても考察した。類数公式をもっと一般のモチーフに対応するL関数の予想に置き換えると何が起こるかについても研究を行った。Muenchen防衛大のC. Greither教授を招聘して、この問題について討論を行った。A. Nickelが定義した非可換Fitting不変量についてもさまざまな考察を行った。
|