研究課題/領域番号 |
23654020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小谷 元子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50230024)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 結晶格子 / 非可換幾何 / 量子ホール効果 |
研究概要 |
結晶のミクロ構造の単純化した数理モデルとして、周期性をもつ無限グラフを考え、これを結晶格子という。結晶格子およびその上のランダム・ウォークに関する申請者のこれまでの研究では、周期構造と作用素の可換性が重要であった。本萌芽研究では、これを物性物理に発する非可換な設定に、非可換幾何学の手法を用いて拡張することを目指し、以下の課題に取り組む。1.分数量子ホール効果と非可換統計、2.準結晶と結晶の統一的取り扱いと代数幾何学、3.格子欠陥と曲率・トーションの取り扱い。これらを研究するために平成23年度は以下の研究をおこなった。初年度であるので、文献収集および物性物理学者も交えたワーキングセミナーを行い、問題の理解に努めた。また、赤間陽二氏を京都大学に派遣、近藤剛史氏、能川知昭氏を東北大学招聘し、議論を深めた。準結晶の数理的研究についてはドイツ・ビレフェルド大学のM.Baake氏と、格子欠陥についてはイギリス・ケンブリッジ大学の時枝正氏と、情報交換および研究討論を進めるため、それぞれを訪問した。分子ホール効果の研究については、東北大学の物理学者と研究討論を行うほか、ジョージア工科大学のJean Bellissard氏、パリ大学のDe Nittis氏を招聘し情報交換を行なった。世界の研究動向について、全般的な助言をもらうために、Weizmann研究所 Uzy Smilansky 氏を招聘した。準結晶と結晶の統一的取り扱いと代数幾何学については、小田忠雄氏が、二重点を持つ代数曲線の一般ヤコビ多様体のコンパクト化に関するSeshadri教授との30年以上前の共同研究が、 結晶に関する小谷・砂田の結果、 更には準結晶にも思いがけず関連することを発見した。 2論文に纏めて投稿中である。格子欠陥と曲率・トーションの取り扱いについては、近藤、甘利、長谷部の論文をスタディグループで詳読している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度なので、情報収集を中心に行った。震災の影響があり、海外との情報交換が難しいと予測していたが、イスラエルからSmilansky氏を、アメリカからBellissard氏を、フランスからDe Nittis 氏を招聘し、十分な研究討論ができた。研究協力者の赤間氏、小田氏も活発に情報収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の情報収集を基礎に、数理モデルをたてその解析を行う。特にスペクトル構造や、極限定理を定式化する。また、コンピュータを用いた数値解析を行い、実際の実験結果との整合性を確認する。ドイツ・ビレフェルド大学のM.Baake氏を訪問し、準結晶の統一的数理モデルの検証を行う。アメリカ・Bellissard氏を、Radin氏を招聘し、ガラス構造形成、ガラス転移について、非可換幾何学を持ちたモデルをたて、材料科学者との議論のためのワークショップを開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額でり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画して研究の遂行に使用する予定である。
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