研究概要 |
結晶のミクロ構造の単純化した数理モデルとして、周期性をもつ無限グラフを考え、これを結晶格子という。結晶格子の幾何とランダムウォークの長時間挙動の研究をシステマティックに行ってきた。これを物性物理に発する非可換な設定に、非可換幾何学の手法を用いて拡張することを目指し、具体的には「分数量子ホール効果と非可換統計」「準結晶と結晶の統一的取り扱いと代数幾何学」「格子欠陥と曲率・トーションの取り扱い」について、連携研究者 小田忠雄氏、赤間陽二氏とともに、研究を行っている。 平成24年度は、物性物理の平山祥郎氏との分数量子ホール効果と非可換統計に関する定期的なワーキングセミナー、川勝年洋氏および赤間氏との格子欠陥と曲率・トーションの取り扱いに関する定期的なワーキングセミナー及び、海外の研究者との情報交換を行った。特に、米国 ジョージア工科大学からJ.Bellissard氏、R.Parada氏、テキサス大学C.Radin氏を招聘し、準結晶と結晶の統一的取り扱いと代数幾何学に関係して、国際研究集会を開催し、disorder系の物質の非可換幾何学的アプローチについて議論した。また、英国J.Coates氏を招聘し、準結晶に関する母関数の特異点に関して整数論からの知見を得た。小田氏は、準結晶格子を記述するカット&プロジェクション方法により結晶格子を記述することに成功した。赤間氏は、molecular sphereの構造予想に向けて、合同な球面四角形による球面タイリングの分類を行った。また、準結晶に, 確率的に独立でない統計的擾乱が道理にかなった組合せ的条件を満たすと, 準結晶の回折測度は, 純点成分と絶対連続成分が計算できることを示した。
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