研究課題/領域番号 |
23654020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小谷 元子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50230024)
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キーワード | 非可換幾何学 / 準結晶 / 格子欠陥 / 量子ホール効果 |
研究概要 |
結晶のミクロ構造の単純化した数理モデルとして、周期性をもつ無限グラフを考え、これを結晶格子という。結晶格子の幾何とランダムウォークの長時間挙動の研究をシステマティックに行ってきた。これを物性物理に発する非可換な設定に、非可換幾何学の手法を用いて拡張することを目指し、具体的には「スピン量子ホール効果の非可換幾何学による定式化」「準結晶と結晶の統一的取り扱いと代数幾何学」「格子欠陥と曲率・トーションの取り扱い」について、研究協力者 小田忠雄氏、赤間陽二氏とともに、研究を行っている。 平成25年度は、現在の固体物理における中心的話題である「スピン量子ホール効果・トポロジカル絶縁体」に関する勉強会、セミナー、国際ワークショップを行った。H.Schultz-Baldes、 E.Prodan、 P.Kuchment、 古田幹雄、森吉仁志、村上修一を招聘した2月の国際ワークショップでは、非可換機科学のK理論によって、バルクーエッジ対応を定式化できることを見出し、界面への応用への道筋を検討した。赤間氏とともに、準結晶の格子欠陥に関し研究を進めた。また、材料科学研究者とともに格子欠陥と曲率・トーションの取り扱いに関して、定期的なセミナーを行い、特に2つの結晶の出会う粒界における安定性を測る数学的指標を見出した。小田氏は引き続き準結晶と結晶の統一的取り扱いと代数幾何学の研究を推進した。ルーマニアの研究者が興味を示し、AMS-ルーマニア集会に招かれ、講演および討論をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
情報交換のための国際研究集会を開催し、またいくつかの成果発表の論文と講演を行っている。スピン量子ホール効果や、破壊、準結晶の物性などに関して、非可換幾何学を用いた定式化に成功し、これからの進展の方向を見出すことができた。また、物性物理や材料科学の研究集会に招聘され、好評をいただいた。数学に閉じず、これらの分野に対しても大きな貢献をできる展望が開けた。
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今後の研究の推進方策 |
スピン量子ホール効果・トポロジカル絶縁体に関しては、個々の事例を超えた普遍的な枠組みを定式化することができた。これを基礎として、物理ではまだ未開拓であるスピン流の数理物理を展開していく。 また、格子欠陥・破壊を非リーマン幾何学を用いて定式化したが、これらの欠陥の周りに生じる局在化に対し非可換幾何学のK理論の応用を見出したので、準結晶の粒界に生じる特殊な電子状態やスピン状態についての研究を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、海外から研究者を招聘し研究集会を予定していたが、予想以上の展開が見込まれると判明した。そのため、今年度は準備のための予備研究を行うこととし、次年度に研究集会を移動する。 4月にオーストラリアキャンベラにおいて国際研究集会を実施する。講演者6名の旅費として使用する。
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