研究課題/領域番号 |
23654021
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮岡 礼子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70108182)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 極小曲面 / ガウス写像 / 除外値 / 値分布 / Nevanlinna理論 / 被覆変換 |
研究概要 |
Ossermanは,完備だが有限全曲率をもつ極小曲面(代数的極小曲面という=穴明きリーマン面上で定義される)のガウス写像の除外値集合が3点以下であることを代数的に示したが,除外値が3の代数的極小曲面は見つかっておらず,除外値は高々2点であろうという予想があり,本研究課題ではこの問題への挑戦を行っている.代数的極小曲面のガウス写像の値分布についての代数的議論を擬代数的極小曲面に拡張したKawakami-Kobayashi-Miyaoka: "The Gauss map of pseudo algebraic minimal surfaces" (2006, Forum Mathmaticum) において,我々は値分布論における分岐点,分岐値の果たす役割の大きさを明らかにした.ここからの示唆として,代数的議論をネバンリンナ理論に拡張する際,分岐点,分岐値の果たす役割に着目しなければならない.座標変換の影響をどう評価するかなどの大きな問題があるが,上記論文の手法をモデルとして,普遍被覆上の議論を推進している.難点は,被覆円板上の自然な複素座標と,曲面の穴の回りの複素座標は全く異なるという認識をしなければならないことである.実際被覆円板上の自然な複素座標は穴が理想境界に対応しているため,穴の回りで曲面を無限回覆っていて,通常の曲面の座標ではない.こうした困難を取り除くには指数関数や対数関数を用いるアイディアが必要となり,まだ決定的な結果には至っていない.双曲幾何でよく知られているtessellationのグラフィックはこうした議論をする際の大きな手助けになる.こうしたいわば実験的手法,観点からも問題に取り組むことを試みている.より理論的に,我々はまだ1次のジェット空間しか考えていないが,より高次のジェット空間を用い,その幾何学的な意味も考えているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的に構成された宮岡-佐藤曲面の検証は大きなヒントを与えている.ガウス写像の次数,オイラー数,さらに被覆法で構成される場合の不変量が明示的に与えられているので,基本領域での情報が十分把握できる.これを普遍被覆上の議論と対応付け,基本群作用の影響を配慮しつつ論じている.本課題に対する先行研究である小林亮一氏の議論でつめるべき箇所は,特性関数の有限性の上界を与えるκの評価を基本領域が円板で切り取られる部分の面積評価ではかること,そして,これらを用いるディフェクトの評価,最後に周期条件をどう使うか,と問題点が明らかになっている.従来の手法は使えないので,曲面および普遍被覆上の座標の選び方に始まり,被覆変換による基本領域の変形を緻密に解析すること,対数微分の補題の適用方法,1ジェット上での特性関数,接近関数の評価,極小曲面に特有の正則微分の役割を明らかにする事で研究を進めている
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今後の研究の推進方策 |
κの評価を定めることを目標にする.これは基本領域が円板で切り取られる部分の面積評価から得られるが,基本領域自体には双曲計量,被覆円板の半径はユークリッド計量という異なる計量が入り交じり,工夫を要する.しかも最終的にリーマン面の種数や穴の数によらない評価が必要であり,通常の考察ではどこから手を付けてよいかわからず,まさに挑戦的取り組みである.[KKR]の不変量Rはガウス写像の次数と曲面のオイラー数から決まるものであるが,これを普遍被覆で考えると,半径が1よりわずかに小さい円板の,ガウス写像によるFubini-Study計量の引き戻しから入る特異計量で計った面積と,双曲面積の比をみることが対応する量になる.もちろんこれはR とは全く異なる数になるが極限としてはどうなるか,この評価を与えることがNevanlinnna理論適用の鍵になる.ここで注意すべきことは単に円板上の有理形関数を考えているのではなく,基本領域ごと不変な,つまりもとの曲面の基本群作用で不変な有理形関数を考えていることである.この基本群作用を小林氏はGalois群作用とよんでいるが,こうした有理形関数を扱う手法は未知で,取り組みとして誠に興味深いものが有る.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進した事に伴い発生した未使用額であり,平成24年度請求額と合わせ,次年度に計画している研究の遂行に使用すr予定である.
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