研究課題/領域番号 |
23654021
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮岡 礼子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70108182)
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キーワード | 代数的極小曲面 / ガウス写像 / 値分布 / 双曲型曲面 / ガロア群 |
研究概要 |
代数的極小曲面のガウス写像の除外値の最大個数が2である事の証明を進めている. 従来の基本領域に限った議論では進展が望めないので,双曲円板にすべてをリフトし,超越的な方法で議論している.現在まで得られているのは次の成果である. 1.閉じた双曲型リーマン面上に拡張できる穴あきリーマン面上の有理形関数を,単位円板にリフトする.r を1に十分近い数とするとき,半径 r の円板に対して,個数関数N(r), 接近関数m(r),そしてこれらの和で与えられる高さ関数T(r)を考える.ここまでは複素平面上の従来のNebanlinna理論と同様である.高さ関数の r に伴う増大度の評価はNevanlinna理論でもっとも重要な箇所であるが,円板上でこれを行う際には,この増大度のある意味での上限を与える定数 κ を求めねばならない.穴あき双曲型完備リーマン面を円板にリフトすると,その基本領域を基本群で変換した無限個のコピーが現れ,r によりカスプ部分が切り取られるが,その面積変化の評価を双曲計量とFubini-Study計量の比で行う事が必要となる.これは古典的なCohn-Vossenの不等式の集合版であるが,種数と穴の数が任意の穴あきリーマン面に対するユニバーサルな評価が必要であり,通常の議論では不可能である.それを可能にするための議論に多くの労力をさいている所である. 2.これを解決したあと,LLDと呼ばれる対数微分不等式の分解を用いて,任意に与えられたディバイザへの接近の度合いを対数微分を用いて評価する. 3.最終的にもっとも困難な部分は,極小曲面を実現する周期条件を使う箇所に現れる.ここでは周期を指数関数の肩にのせ,実周期が消える事をフルに用いる事が必須となる. 1,2,3のステップはいずれも概要が出来ているが,細部をつめる課題が残っており,これを解決するのが目的である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数的極小曲面のガウス写像の除外値の個数が2である事の証明が進んでいる. 非常に難解なため,緻密な議論が必要であり,関数論,曲面論,積分論,双曲型等長群作用など多くの知識とアイディアを要するが,おおむねの道筋は既にかきあげている. これを一つ一つ確認する作業を遂行中である.
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ書き上がっている論文を更に推敲し,完成し,投稿する.非常に難解な論文なので2部に分ける事も考えている.前半で重要な κ の評価を与え,後半では周期条件に関わる根本的考察を行う. 前半ではポアンカレ円板に作用するガロア群の対称性を用いて,双曲型曲面のリフトの円板で切り取られる面積の半径による評価が必要で,この部分に緻密な考察を必要としている. 後半は実周期が消えるという条件を,値分布にどう反映させるかにおいて,指数関数を用いる考察が必要となる. これを「円板上のNevanlinna 理論」として完成させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に計画していた名大の小林亮一氏との共著論文を完成するための,名古屋出張及び,小林氏の招聘は,24年始めの小林氏の入院により延期せざるを得なかった.その旅費を次年度使用する.頻繁な連絡が必要なので,これに70万円程度見込んでいる. また開催日程が次年度となっていたOberwolfach研究集会"Progress in Surface Theory"が25年5月に開催される事になったので,これに参加・講演するため,60万円程度かかる. 24年1月に会ったKIASの極小曲面論の専門家であるJ.G. Choe氏を招聘して,25年8月8日から10日に仙台で国際研究集会を開催して議論を行うため,招聘費用として20万円程度を考えている. 最終的に残金を用いて,今年度後半に仙台で値分布に関する国際研究集会を開催し,集大成とする.
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