研究課題/領域番号 |
23654022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 俊丈 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (80144111)
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キーワード | ガウス曲率 / 平均曲率 / 代数曲面 / 極小曲面 / 可積分系 / 離散データ |
研究概要 |
本研究の幾何学的対象は,代数方程式,超越関数によるパラメーター表示,複素解析関数,微分方程式など,さまざまなかたちで与えられる.このようなインプットから,実際に幾何学模型を制作するためには,幾何学的対象を離散データ化して,工学で用いられる適切なファイル形式に変換する必要がある.まず,幾何学的な対象から,どのようにして適切に離散データを抽出できるかについて研究した.また曲面の離散データからガウス曲率,平均曲率など微分幾何学的な不変量の,よい近似値を計算する手法を考察し,実際の幾何学模型の制作にあたっては,座標の離データのみならず,曲面の法線方向のデータを各点に加味することが有効であることがわかっているので,このような手法を技術的に確立することを研究した.数理科学研究科では,19世紀末から20世紀はじめにかけてドイツで制作された石膏の幾何学模型を所蔵しているが,これらの模型について,数式から離散データを作成して,アルミニウムなどの素材によって,実際に模型を制作するための基礎的な手法を確立した,これを用いて,負の定曲率曲面をヤマダ精機と共同で制作し,東大数学同窓会の寄贈により,数理科学研究科に展示される見通しとなった.そのほかに東京大学総合研究博物館と共同でドイツで制作された石膏模型を調査し,レプリカを制作して,2013年3月21日に開館してJPタワー,インタメディアテックに約100のレプリカを展示した.特異点理論,可積分系などの分野で,現代の数学の先端的な研究対象に対する,可視化の可能性について研究した.また,幾何学的な対象から,離散データを抽出する手法を確立する一方,逆に離散データから幾何学的不変量を計算する方法についての研究をすすめた.離データを経由して3次元の実体模型を制作するまでの,インタフェースを構築するためのステップについて,一定の成果を得る事ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数方程式,超越関数によるパラメータ表示,微分方程式などさまざまな方法で与えられた曲面について,実際に数式から離散データを作成し,工学で用いられるファイル形式に変換して,アルミニウムなどの素材によって模型を制作する一連の手法を確立することができた.この手法を実際に応用して,負の定曲率曲面のアルミニウム製の模型を制作することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後も3次元実体模型の制作のために必要な,理論的な基礎について,ワークショップなどを開催して,研究交流情報交換をすすめる.離散データから微分幾何学的な不変量を抽出する理論的な基礎を確立する.ヤマダ精機との間で行なってきた共同研究を継続して,展開する.また,海外の研究者との研究交流のため,研究者の招聘,研究集会やワークショップの開催を行なう.次年度は,定曲率曲面,極小曲面などの制作に加えて,3次元空間を充填する結晶の模型の制作などを予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
同研究を行う旅費の支出,コンピュータソフトウェアの購入,幾何学関係の図書の購入をおこなう.また,海外の研究会に参加して,研究成果を発表するための旅費を支出する.また,模型の簡易な制作のために,STLファイルを直接,樹脂などの模型として出力できる3Dプリンターを購入することを計画している.
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