離散的な点データから,精度の高い幾何学模型を制作するための技法についての研究を行なった.クレブッシュ曲面とよばれる3次の代数曲面の模型を,ヤマダ精機と共同でアルミニウムで制作したが,本年度は,この曲面上の27本の配置を模型上に加工によって示すことを試み,実際に模型上に27本の直線の配置を示すことに成功した.また,やはり,ヤマダ精機と共同で負の定曲率曲面のアルミニウム製の模型の制作を行なった.これらの模型は,ともに,東京大学数理科学研究科棟に展示されている.現在では,3Dプリンターを用いて,Mathematicaなどのソフトウェアで作成したSTLファイルなどから,模型を制作する事が可能であるが,代数方程式や微分方程式で定義された曲面を金属などの素材で,より精密に作成するには,離散的な点データから曲面の曲率などを算出する,理論面の考察が必要である.本研究では,実体模型の制作とあわせて,このような離散幾何学の問題に関する研究を行った.我々の模型の制作では,アルミニウムを削る方法を用いているので,離散的な点データから模型を制作するためには,削る際に最適な刃をあてる方向の決定などを行なう必要がある.このように,離散的な点データから,曲面の接平面方向と法線方向のデータを導出して,模型の精度をあげる研究を行なった.また,4次元クライン群の極限集合など,金属を削る加工法では表現が困難な対象について,クリスタルガラスの中に,点をレーザー光線によってプロットすることによって可視化する手法を開発した.
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