研究課題/領域番号 |
23654023
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
二木 昭人 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90143247)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アインシュタイン計量 / ケーラー多様体 / K-安定性 / 乗数イデアル層 / リッチ・ソリトン |
研究概要 |
乗数イデアル層はモンジュ・アンペール方程式が解けないとき現れる.一方,二木不変量はケーラー・アインシュタイン計量が存在するための障害であり,ケーラー・アインシュタイン計量の存在はモンジュ・アペール方程式に帰着されるので,乗数イデアル層と二木不変量とは何らかの繋がりがあると考えられる.このような結果を最初に出したのは Nadel で,1次元複素射影空間上で考察している.この結果は佐野友二氏との共同研究によりトーリック Fano 多様体に拡張されることが示された.乗数イデアル層はケーラー・アインシュタイン計量の場合だけでなく,リッチ・ソリトンが解けないとき,リッチ流が収束しないときにも現れる.このような結果を用いてトーリック Fano 多様体上のリッチ・ソリトンの存在を示すことができる筈であるが,まだそこまでは出来ていない.また乗数イデアル層と test configuration による K-不安定性が関連するものと考えられるが,この道筋も見えていない.test configuration は G.Tian の言葉では special degeneration と呼ばれ,Tian は中心ファイバーは正規と仮定した.これは二木不変量を積分で定義し,特異計量の取り方によらないことを示すために,複素余次元2以上の特異点のみを持つ場合を考える必要があったからである.その後,Donaldson により,任意のスキームに対し二木不変量が定義し直され,任意の test configuration を用いて K-安定性が定義された.最近,Li-Xu により,test configuration の全空間は正規と仮定しなければならないこと,また,Tian が定義したときのように,中心ファイバーは正規と仮定して良いことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乗数イデアル層と二木不変量に関する基本的論文を今年度 Mathematische Annalen から出版することができた.また,survey article も London Mathematical Society から出版した.この2つの論文はまだ発展性があり,取り組む時間と優先順位によっては継続性を持って研究対象となりうるテーマを含んでいる.特に上述のようにソリトンの存在への応用など,応用面で有望な課題がある.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までで残された課題にどのように取り組むかは,取り組むべき諸々の課題との優先順位の問題,それぞれの問題の外的発展のタイミングにもよるが,今年度はケーラー・リッチ流との関連性に力点を置きたい.またケーラー・リッチ流を用いた複素幾何への応用の研究が活発になっているので,これにも取り組みたい.コンパクトリッチ・ソリトンの直径の下からの評価も取り組むべき課題である.この他,test configuration や二木不変量の relative version は Szekelyhidi らによって定義され,相対 K-安定性が定義されているが,今年度はこの相対版にも取り組みたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
ソリトンへの応用など未達成部分の研究の為,研究連絡の経費を翌年に繰り越した.これを次年度分と合算し,成都の四川大学で開催される日中友好幾何学研究集会,京都大学で開催される Pacific Rim Complex Geometry Conference, 菅平複素幾何シンポジウム,九州大学で開催される幾何学シンポジウムなど,研究集会旅費に大部分を使用する予定である..また,パソコンの更新,コンピュータサプライの補充も必要である.大域解析関係書籍の購入も必要である.
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