研究課題/領域番号 |
23654023
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
二木 昭人 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90143247)
|
キーワード | アインシュタイン計量 / ケーラー多様体 / K-安定性 / 乗数イデアル層 / リッチ・ソリトン |
研究概要 |
test configuration や二木不変量の relative version は Szekelyhidi らによって定義され,相対 K-安定性が定義されている.今年度はこの相対版にも取り組んだ.これについては満渕による結果があり,これに対する理解が深まった.これとは別な研究であるが,錐角度を持った特異ケーラー・アインシュタイン計量を用いて,Fano 多様体上にケーラー・アインシュタイン計量が存在することと多様体が K 安定であることが最近 Chen-Donaldson-Sun, Tian により証明された.この方法は Cheeger-Colding による Gromov-Hausdorff 収束を用いる.収束は実は代数多様体としての極限であり,極限を中心ファイバーに持つテスト配位が構成される.この中心ファイバーの特異点集合が,この研究課題で追い求めて来たものであろう.またケーラー・リッチ流を用いた複素幾何への応用の研究が活発になっているので,これにも取り組んだ.その副産物として,コンパクトリッチ・ソリトンの直径を universal connstant を用いて下からの評価することに成功した.これは通常のラプラシアンをひねって得られる2回楕円型線形作用素の固有値の評価から得られる.実際,ソリトンを定めるポテンシャルによりひねった Bakry-Emery ラプラシアンはそのポテンシャル自身を固有関数に持ち,固有値はソリトン方程式の計量の係数である.一方,通常のラプラシアンの固有値の評価については Li-Yau に始まる長い研究の蓄積があり,ここに直径が用いられる.これを Bakry-Emery ラプラシアンに拡張することができ,これをソリトンのポテンシャルに適用して,直径の評価を得る.この手法は平均曲率流の自己相似解にも適用でき,同様の結果を得ることができる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンパクト多様体上の縮小勾配リッチソリトンの直径についての結果を得て,また,平均曲率流の自己縮小流にも同様の手法が見いだすことができた.これについての論文の出版も順調に進めることができた.その一方,ケーラー幾何への Cheeger-Colding 理論の新しい応用など,今後の研究の方向性も見えてきた.これらを推進する為の,研究集会を無事に開催することができ,研究交流も進んだ.
|
今後の研究の推進方策 |
Bakry-Emery ラプラシアンの固有値の改良は,リッチ・ソリトンの直径の下からの評価につながる.この方向の改良を推進したい. 上述のように,錐角度を持ったケーラー・アインシュタイン計量を用いた Yau-Tian-Donaldson 予想の証明が得られた.この証明の示唆することは多い.特に,Gromov-Hausdorff 収束が代数的収束であるという点は重要である.このような観点から,リーマン多様体の収束理論と複素幾何の研究をすることが今後の方針である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度も,研究計画の翌年度への研究計画の延長の為,研究連絡の経費を翌年に繰り越した.これを次年度分と合算し,北海道大学で開催される日中友好幾何学研究集会,大連で開催される Pacific Rim Complex Geometry Conference, 菅平複素幾何シンポジウム,東京工業大学で開催される幾何学シンポジウムなど,研究集会旅費に大部分を使用する予定である..また,パソコンの更新,コンピュータサプライの補充も必要である.大域解析関係書籍の購入も必要である.
|