研究概要 |
最終年度において, 志賀はKlein群の擬等角変形空間の複素構造について研究をおこない,Klein群の不連続成分の形状がその変形空間の構造に大きく影響を与え,様々な複素解析的性質が変化することを証明した. 宮地はタイヒミュラー空間において距離空間に作用する新しい写像の概念を導入し,距離空間の一般論を展開した.それを用いて写像類群の新しい特徴付けを与えた.また,単位円板からタイヒミュラー空間への正則写像について研究して新しい剛性定理を得た. 遠藤は, 鎌田聖一氏との共同研究により, 超楕円的なLefschetzファイバー空間の安定化定理を証明した。これは,種数2のLefschetzファイバー空間に対するAurouxの定理の一般化を与えるものである. 研究期間全体を通して, 志賀はリーマン面の正則族についてその個数を底空間の幾何構造を用いて具体的に評価した.また,タイヒミュラー曲線についてその剛性と有限性について新たな知見を得た.さらに,Klein群の擬等角変形空間の複素構造について研究を行った.また宮地との共同研究で, Lefschetz fibrationについて,そのモノドロミーについていくつかの例を構成し,そのholonomyとslope不等式の関係について新たな知見を得た. 宮地は年度を通じてタイヒミュラー距離の無限遠の挙動と位相幾何学的側面の関係について研究した.最終年度に得た正則円板の剛性定理は,今吉洋一氏,志賀啓成氏により80年代に得られた正則族の剛性定理の証明において得られた定理の拡張となっており,リーマン面の正則族及びレフシェッツファイバー空間の研究に貢献することが期待される. 遠藤は, T. E. Mark, J. Van Horn-Morrisとの共同研究により, 様々な有理ブローダウンに対応するモノドロミー置換を発見した. また, Lefschetzファイバー空間をチャートと呼ばれる有限グラフを用いて研究した.
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