研究課題/領域番号 |
23654026
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小磯 憲史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70116028)
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キーワード | 平均曲率一定曲面 / 極小曲面 |
研究概要 |
Riemann 多様体 M が次の性質を持つ時,「極小曲面の分離定理が成り立つ」という.M における任意有限個の点の任意の配置 {P_i} に対して,次の性質を持つ正の定数 r が存在する: 各点 P_i を中心として半径 r 以下の測地球 B_i があり,それぞれの中に閉曲線 G_i があれば,その和集合を境界とする完閉極小曲面は球の和集合に含まれる.すなわち,G_i を極小曲面で繋ぐことは全くできない. 本研究では,Euclid 空間において証明したこの性質をなるべく一般の Riemann 多様体に拡張することを目標としている. 前年度までに,3 次元 Poincare 球において,極小曲面を一般化して平均曲率の小さい曲面の分離定理を証明した. 今年度はこの結果を再び極小曲面に適用するかわりに空間を変形することによって次の結果を得た. 定理: 3 次元 Poincare 球 (M, g_0) に共形な Riemann 多様体 (M, g = e^{2f}g_0) (|df| < 1/2) において,極小曲面についての分離定理が成立する.ただし,g が完備であるためには例えば f の下からの有界性などが必要. この定理では共形平坦性を仮定しているという意味では一般の Riemann 多様体はまだ遠い目標である.しかし,f には 1 階微分の条件しか仮定していないので,泡のようにいくらでも多くの領域の曲率を正にできるという意味では,一般の Riemann 多様体の場合にかなり近づいたということができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は Euclid 空間が持つ性質を可能な限り一般の Riemann 多様体に拡張することであるが,実際に定曲率空間以外の Riemann 多様体に分離定理を拡張できた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた極小曲面についての分離定理を再び平均曲率の小さい曲面についての分離定理に拡張する.また,現在得られている結果の条件は共型平坦であるが,この条件を弱めるべく研究する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は Euclid 空間における極小曲面の非存在に関する結果を定曲率 -1 の空間における平均曲率 1 の曲面に関する結果に拡張するところまで進展した.目標としては,可能な限り一般の Riemann 多様体における結果に拡張することであるが,定曲率 -1 の空間を一般の Riemann 多様体の方向に拡張する方法が開発されたので,それを実際に適用するためにまだ時間が必要である. 現在まで得られた定曲率空間における結果とその拡張を幾何学シンポジウムなどで発表する. その準備及び旅費として使用する.状況によっては,一部を機材購入費にもあてる.
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