研究実績の概要 |
Riemann 多様体 M が次の性質を持つとき,「極小曲面の分離定理が成り立つ」という.M における任意有限個の点の任意の配置 {P_i} に対して,次の性質を持つ正の定数 r が存在する: 各点 P_i を中心として半径 r 以下の測地球 B_i があり,それぞれの中に閉曲線 G_i があれば,その和集合 ∪_iG_i を境界とする有界な極小曲面 S は測地球の和集合 ∪_iB_i に含まれる.即ち,S は完全に分離される. Euclid 空間において極小曲面の分離定理が成り立つことは錐定理を用いて証明される. 本研究では空間と曲面の双方を一般化することに成功した.即ち,Euclid 空間を一般化し,また「極小曲面の分離定理が成り立つ」の概念を平均曲率が定数でない曲面に拡張し,次の定理を証明した. 3 次元 Poincare 球 (M,g) = (H^3, g_0) に共形な Riemann 多様体 (M,g) = (H^3, e^{2f}g_0) において,関数 f が条件 |df| < a < 1/2, f < b を満たせば,平均曲率の絶対値が e^{-b}(1 - 2a) 以下の曲面についての分離定理が成立する. このような定理は曲率が負であることと相性がいいが,上の定理の条件は f の 1 階までの微分しか現れていないので,局所的には正の曲率を許すということは注目すべきである.
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