研究課題/領域番号 |
23654028
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 修 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30201510)
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研究分担者 |
大本 亨 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20264400)
山本 卓宏 九州産業大学, 工学部, 講師 (60435972)
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キーワード | 写像空間 / Vassiliev型不変量 / 映像理論 |
研究概要 |
本研究の目的は,写像空間の滑層分割のトポロジー・組合せ論の一般論を展開し,今まで定式化できていなかった,写像や多様体に対する高次のVassiliev型不変量や,一般次元の多様体の有限型不変量を,新たな観点から定式化することにある.さらに,曲面の可視化や映像理論,DNA 結び目解析への具体的応用に向けた足がかりを築くことも目的の1つである.そのため平成24年度は,Vassiliev複体とスペクトル系列の手法に基づき,Vassiliev型不変量の定式化に関する検討を進めた.具体的には,様々な特異点や特異ファイバーの分類毎にVassiliev複体を考え,研究分担者である大本亨,山本卓宏の協力のもと,次数1不変量の研究を進めた.さらに国内外の研究者との交流・連携を進めた.具体的には,山本稔と球面の裏返しの特異点論的表現法について,映像理論との関連も含めて議論を行い,一定の成果を収めた.また高瀬将道とは,特異写像のはめ込みリフトについて研究を進め,微分トポロジー的手法を駆使することにより,ある場合に存在性条件を決定することに成功した.またBlanloeilと特異点のまわりに現れる結び目の同境について研究し,その手法がより一般のexactな絡み目の状況にも拡張できることを示した.また,ある種の擬斉次多項式の重みが同境不変であることを示すことにも成功した.また,ブラジルのHiratukaとの共同研究で,一般的な写像のReeb複体が三角形分割可能であることを示し,応用としていくつかのオイラー標数公式を得た.平成24年度にはBlanloeilをはじめ海外の研究者と多く議論し,その後の研究の方向性も探ることができた.また,多様体上の多様体束を考え,その上の可微分写像の特異点を用いて,多様体束の特性類の定式化を目指すため,特異ファイバーの研究も進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していた研究がほぼ予定通りに進行している.特に,埋め込み・はめ込みリフトとSmale-Hirsch理論が密接に関連することを明らかにでき,さらに微分トポロジーの種々の古典的結果がこうした問題の解決に本質的役割を果たすことに気が付いたことは,今後につながる大きな収穫であった.また,海外の多くの研究者と議論を行い,これからの研究の方向性を見定めることができたことで,今後の研究の発展への大きな足掛かりを作ることもできた.また,球面の裏返しと映像理論との関連という新たな側面を見出すこともできた.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの予定通り,高次Vassiliev型不変量の定式化を行ってゆく.特に,特異点のA-分類が比較的よく研究されている場合において考察を進め,Goryunov 不変量やAicardi-Ohmoto不変量(共にある種のBennequin 型不変量)の一般化を考えてゆく.さらに,前年度までに行ったファイバー束の特性類に関する検討を理論化してゆく.これらに関しては,研究分担者,連携研究者と連絡を取りながら研究を進める.また,一般次元の多様体のVassiliev型不変量を,Thom空間への写像のなす空間の有限型不変量として定式化する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者,研究分担者,連携研究者の間での研究連絡を密接に行うための旅費として多くを用いる.また,最新の情報を得るために位相幾何学関連図書を購入する.さらに研究連絡のための資料を印刷するために印刷費を用いる.また不変量の具体的計算を行うため,コンピュータソフトを整備する.
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