環境問題の研究には政策など社会との強い関りを持つ面もあるが、それらの整備を合理的に支えるためにも定量的な数理的研究の推進が強く求められている。本研究では、以下の環境問題に関連した不均質媒質の拡散現象の数学・工学・産業を横断した数学協働研究体 制を目指した:(1) 土壌などの環境問題に代表される大規模系を取り扱うために連続時間ランダムウォークモデルなどのミクロレベルでの確率論的手法とマクロレベルでの非整数階の偏微分方程式論を総合したモデルの構築。当該年度ではフラクタルモデル、多孔性媒質モデルなど可能な複数のモデルのサーベイを行い、時間空間方向に複数の非整数階の微分の項を含む方程式の数学解析も実施した。(2) そのような非整数階の偏微分方程式の解の一意存在や漸近挙動、および非整数階の非線形システムが与える力学系などの研究 を実施した。その結果、非整数階偏微分方程式に関して今後の研究の数学的な研究の基礎となる理論が確立できた。(3)前段階で確立された非整数階偏微分方程式論に基づいて汚染源決定などの環境問題における逆問題手法の数学解析を行った。 さらに、数学解析の結果を実験と比較するために、工学・数学の連携による共同研究を行い、特にラボ実験の結果の解析・整理を行った。 欧米では非整数階拡散方程式の物理的研究は多くあるものの偏微分方程式論的な研究は極めて少なく、この分野でイニシャチブを確保するために連携を密に保つためことに努めた。
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