研究課題/領域番号 |
23654036
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小林 亮 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60153657)
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研究分担者 |
三浦 岳 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324617)
手老 篤史 九州大学, マスフォアインダストリ研究所, 准教授 (60431326)
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キーワード | 形態形成 / 自律分散 / 血管リモデリング / 肺の分岐構造 / 真正粘菌変形体 |
研究概要 |
本年度は主として、肺の枝分れ構造の形態形成、血管網のリモデリング、および真正粘菌変形体の運動と形態形成について、自律分散系という観点から研究を行った。 哺乳類の肺は発生段階で枝分れ構造を形成する。我々はFGF10という拡散性のシグナル因子を中心に実験的解析を行った。「肺の上皮の周辺ではFGF10の産生が抑制される」という実験事実をもとに、界面方程式と畳み込み積分で定式化し、このモデルを用いて枝分れ構造の形成の再現に成功した。さらに、FGF10の拡散動態やそのシグナル入力を可視化し、観測されたパラメーターがモデルで想定されている範囲内にあることを実験的に検証した。 ウズラの卵黄嚢の上に展開される血管網では、一様でランダムな血管網から分岐的構造を持つ血管網へのリモデリングが観察される。この過程を担っている血管内皮細胞は、ずり応力を情報として検知していることはよく知られているが、それだけでは不十分で、動静脈系のシャントを防ぐメカニズムが必要である。いくつかの可能性のうちで、圧力を検知していると仮定したモデルが最もよく構造を再現した。さらにこのモデルは、太い血管の閉塞によって引き起こされる血管網の再編成をも再現することに成功した。 真性粘菌変形体は典型的な自律分散系で、管のネットワークの動的な形成過程に関して様々な洞察を与えてくれる系である。我々はこの系から齟齬関数による自律分散制御という概念を抽出し、それによって自律個と全体を調和的に結ぶという提案を行った。このアイデアは元来はしなやかな運動を実現するためのものであり、実際、この制御法は様々な自律分散ロボットに実装され有効性が示されている。我々は、本研究の次のステップにおいて、形態形成においても齟齬関数に相当するものを導入することで、(合目的的な)機能的形態の形成過程を記述する数理モデルを構築できるのではないかと考えている。
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