研究課題/領域番号 |
23654037
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 昭彦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50168431)
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キーワード | 予測理論 / rigidity / Verblunsky係数 / 有限予測係数 |
研究概要 |
研究代表者の井上昭彦や共同研究者の笠原雪夫氏等によって発展させれてきた確率過程の予測理論における新手法を多次元に拡張する問題に関して、本研究において研究代表者、笠原氏およびM. Pourahmadi氏の共同研究により大きな進展が得られている。以前の成果は本質的に1次元の確率過程の場合に限られていたが、本研究によりこれを多次元の場合に拡張する問題に対する鍵となる突破口が開かれたことになる。この問題は、この分野における最も重要で本質的な問題と我々が長年みなしてきたもので、その意義は大変大きいと考えている。その成果の中でも、相関数のフーリエ係数である相係数による種々の表現定理が重要である。応用として、例えば、多次元長期記憶過程に対する有限予測係数の漸近的挙動に関する結果等が得られる。これらの結果を得るための基礎となるのが、完全非決定的とよばれる多次元定常過程のクラスの深い解析である。当該年度においては、この完全非決定的過程に関する理論的な詳しい研究を行った。この研究は、行列値のHardy関数の研究と非常に密接な関係がある。特に、rigidとよばれる大変興味深い性質を持つ行列値外部関数のクラスの深い研究と密接に関係し、それを当該年度において行った。これらの成果は、また、直交多項式の理論の多次元への拡張に関する成果と見ても興味深い新しい結果を与えている。このように、本研究は確率論、行列値Hardy関数の理論、多次元直交多項式等の交差する場所で行われているので、その波及効果も様々な方向に及ぶことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者の井上等により導入された予測理論における新手法を多次元に拡張するという問題に対する突破口が本研究により得られたが、その基礎となるのが、多次元の完全非決定的定常過程に関する深い結果であり、本研究によりそれについての必要な理論整備が進展している。これは笠原雪夫氏およびM. Pourahmadi氏と研究代表者との共同研究の成果である。これらは行列値Hardy関数の理論における新しい解析学的結果であるとみなすこともでき、興味深い結果である考える。これらのことが、本研究が計画以上に進呈していると考える理由である。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の井上昭彦、笠原雪夫氏およびM. Pourahmadi氏により得られている多次元化の成果を、理論的に整理し、最適な定式化を見出し、必要な概念や記号を導入し、最終的に完全な形の(いくつかの)論文にまとめる作業を引き続き行う。これらの成果は、この多次元化に関する今後の研究の親展の仕方に大きく影響を与えると考えられる。この作業のあとには、これらの成果を種々の形に拡張する研究、および連続時間の場合に同様の結果を得る研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
代表者と共同研究者の笠原雪夫氏との研究打ち合わせのために、国内旅費を用いる。また、本研究の成果を国内外の研究集会において発表するためにも、国内および海外旅費を用いる。本研究成果をまとめるために必要となるデスクトップPCを購入する。また、研究遂行上必要となる確率論、解析学、およびファイナンス等の分野の書籍を購入する。同じく研究遂行上必要となるトナーカートリッジ等の物品を購入する。
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