研究課題/領域番号 |
23654037
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 昭彦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50168431)
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キーワード | 予測理論 / rigid関数 / Verblunsky係数 / 有限予測係数 / 国際情報交換 / 米国 |
研究概要 |
本研究は、研究代表者の井上昭彦やその研究協力者である笠原雪夫氏等によって過去15年ほどに間に発展させられてきた予測理論的手法を多次元に拡張する研究であり、この二人とMohsen Pourahmadi氏との共同研究が核となる。この予測理論的手法は、大雑把には「有限の過去を、無限の未来と無限の過去との交わりと見る」という観点を基にしている。この観点がうまく機能するための必要十分条件は、離散時間定常過程の場合には、完全非決定的という性質であることが分かっている。さらに1次元の過程の場合には、外部関数の言葉でのrigidという性質と同値であることが分かっている。すなわち、1次元の離散時間定常過程の場合には、上の観点が機能するための解析的な特徴付けがrigid関数という概念により与えられている。しかしながら、多次元の場合には、この特徴づけは我々の研究の前には得られていなかった。そもそも、多次元の場合のrigidという概念が正しく定式化されていなかったのである。当該年度の研究では、笠原雪夫氏やMohsen Pourahmadi氏との共同研究により、多次元の場合のrigid関数の正しい概念を定式化するとともに、それに関して1次元の場合と同様の種々の理論整備を行った。その結果、非退化の多次元離散時間定常過程に適用するのには十分な基礎づけが得られた。さらに、当該年度には多次元の連続時間定常増分過程に予測理論的手法を展開するための、準備的な作業を開始し、ある程度の成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者の井上昭彦や研究協力者の笠原雪夫氏らにより発展させられたきた予測理論的手法を多次元の設定に拡張するというのが本研究の主な目的であった。それに対して本研究により、まず離散時間定常過程という最も基本的な場合に突破口が見いだされた。さらにそれについての研究を進めていくことで、多次元の場合を扱うための種々の知識やノウハウが順調に積み重ねられている。さらに、連続時間の多次元の場合に理論を展開するための見通しにも、明るいものが見えてきた。これらのことが、本研究が当初の計画以上に進呈していると考える理由である。
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今後の研究の推進方策 |
多次元の場合へrigid関数の概念を拡張するための道筋が、笠原雪夫氏等との協力により得られたことで、この成果が影響を及ぼす射程をまず離散時間の場合に見極め論文にまとめていく。さらに、準備的な研究で見通しが見えてきた多次元の連続時間の場合の研究をさらに進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予想に反し、多次元の場合へのrigid関数の定義を拡張するための道筋が笠原雪夫氏との共同研究により見いだされた。研究遂行上、この事柄のメカニズムとそれが及ぼす影響を見極めることが重要であることから、研究打ち合わせや研究発表の計画を変更し、多次元のrigid関数の解析を行うこととなったため、未使用額が生じた。 多次元のrigid関数の解析とそのための研究打ち合わせおよびシンポジウムでのそれに関する発表を次年度に行うこととし、未使用額をその経費に充てることにしたい。
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