研究課題/領域番号 |
23654039
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
村木 尚文 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (60229979)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 非可換確率論 / 独立性概念 / q-独立性 / q-変形フォック空間 / 普遍計算規則 / q-変形ブラウン運動 / q-変形正準交換関係 |
研究概要 |
非可換確率空間たちに対する普遍的積演算としてのq-積を構成することを試みた。C*確率空間の族として与えられた非可換確率空間たちにGNS構成を適用し、これをq-Fock空間上の作用素環に埋め込むことにより、q-積を構成することに成功した。この埋め込みを作るにあたっては、GNSヒルベルト空間のCONSを利用し、ある種のマトリックスユニットを定義することにより、(non-unital な)*代数射として、埋め込み写像を構成した。また、このq-積から混合モーメントの普遍計算規則としての独立性(普遍的な展開係数の族)を取り出すことに成功した(これをq-独立性と名づける)。また、この展開係数の値は、ある種のメビウス反転公式を用いることにより特徴付けられることがわかった。このq-独立性概念に基づいて、非可換確率変数列に対して汎関数中心極限型の極限を取ると、極限確率過程として、Bozejko-Speicherのq-正準交換に従うq変形ブラウン運動が得られるものと予想される。本研究において導入されたq変形独立性は、(仮想的な)真のq-独立性に対する近似概念であることがわかった。さらに、No Go Theorem として、(仮想的な)真の独立性概念が満たすものと想定される普遍性と exact性を持つ独立性概念(普遍定数の族)は存在しないことを証明することが出来た。この意味において、本研究で導入したq変形独立性の概念は、ある意味で best possible なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に掲げた項目について、順調に成果が挙げられたため、本研究は概ね順調に進呈しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2011年度に構成したq-積とq-独立性の概念に基づき、2012年度には、中心極限定理、少数の法則、畳み込み、無限分解可能分布等の確率論的概念についてのq-類似を構成することを試みる計画である。そしてこれらの q-類似のもつ性質について調査研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を推進するにあたって必要となる最新の研究成果に関する情報を収集するための出張に2011年度に使用する予定であった研究費のうち約13万円強は、次年度に使用する。これは、出張回数が予定より少なかったため残った額である。幸い、研究は順調に進んでいるため、この13万円強は、次年度に請求する研究費とあわせて、主に、情報収集および研究成果の発表のための国内出張および海外出張の旅費にあてる予定である。また、研究推進に必要な文具等の消耗品の購入にも研究費をあてる予定である。
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