研究課題
本研究の目的は、巨大なグラフ、成長するグラフ、ランダムグラフ、辺に向きや加重など付加構造をもつグラフ(ネットワークと総称)のスペクトル解析にある。特に、量子確率的な観点と手法によって新しいアプローチを提案し、ネットワークの背後に非可換的構造を探索する。次いで、ネットワーク上の確率過程に付随した頂点間統計量の漸近挙動を解明し、ネットワークの構造を推定するモデル化手法(逆問題)を確立することにある。いくつかのネットワークのクラスについて、スペクトル解析の具体的な計算結果が得られ、その上のダイナミクスに関する特性量とスペクトルの関連が明らかになった。これをもとに、逆問題を端緒に付けることができた。1.有向グラフのスペクトル解析:非対称行列に対する一般論は困難であるため、有向グラフのマンハッタン積について具体的な計算を蓄積した。特に、パスグラフのマンハッタン積で、一方のパスグラフが小さい場合については、行列解析によって詳細な結果が得られ、ゼロ固有値の重複度を求めることができた。因子数が少し大きいものに対しては、数値計算による観察を続けている。2.距離kグラフのスペクトル解析:超立方体の距離kグラフの固有値分布を完全に決定し、因子の個数が無限大になる極限分布を具体的に導出した。極限分布については、代数的中心極限定理として一般のグラフの直積の場合に拡張された。超立方体の場合には、加重付グラフに拡張され、q変形エルミート多項式との関連が明らかになった。3.グラフ上のダイナミクスの確率解析:スパイダーネット上の量子ウォークの局在性の判定条件を導出した。さらに、量子確率論において基本的である相互作用フォック空間の手法を古典的なランダムウォークに応用して、nステップ推移確率や再帰確率に関する公式を再構成した。この公式をさらに一般のグラフに拡張する上で、量子確率的手法の有効性を確認した。
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