研究課題/領域番号 |
23654049
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉本 充 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60196756)
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キーワード | 相空間解析 / フーリエ積分作用素 / モジュレーション空間 / 時空間評価式 / 分散型方程式 / シュレディンガー方程式 |
研究概要 |
偏微分方程式論の研究において、相空間上で議論を展開することにより解の性質に関する情報を引き出す方法論(相空間解析)は、解析力学の登場以来古くから用いられている手法のひとつである。この研究は、特に解の定量的な情報(Lp-型評価など)を相空間解析により導き出すための、包括的で新しい方法論を構築することを目指すものである。さらに、この方法論を非線形問題などの偏微分方程式の諸問題に応用し、「比較原理」「フロー法」などの評価式導出の際の新しいアイデアも取り込みながら、変数係数の場合など方程式の一般化へのブレークスルーの可能性をも探るものである。本年度は、主に「分散型方程式に対する平滑化評価式の最良定数」に関する研究に取り組んだ。これにより、シュレディンガー方程式に対する様々なタイプの平滑化評価式の最良定数および最良を実現する関数の存在・非存在を決定するとともに、さらにそれらの臨界型の場合にまでこの研究を推し進めた.これらの結果は、比較原理を用いることにより直ちにより一般の分散型方程式の場合の結果を導く。また、副産物として思わぬ恒等式を発見するなど,今後の新たな展開も期待される.これらの研究成果は、“Fourier Analysis and Pseudo-Differential Operators”(於 フィンランド・Aalto 大)、 “Phase space methods for pseudo-differential operators”(於 オーストリア・ESI)などの国際研究集会に招待された際に、口頭発表の形で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、まずはモジュレーション空間に関する基本課題の解決に取り組み、さらにはその成果を用いて定量的な相空間解析を行うことにより、分散型方程式に関する応用課題の遂行をめざすものである。昨年度は、このうちモジュレーション空間に関する基本課題において「モジュレーション空間とソボレフ空間との間における包含関係の決定」「モジュレーション空間上で非線形作用が閉じるための十分条件の導出」「モジュレーション空間上で正準変換が閉じるための十分条件の導出」などの所定の成果を収め、定量的な相空間解析のための基礎付けが確立した。本年度は主に応用課題を推進し、シュレディンガー方程式の時空間評価式(特に平滑化評価式)の最良定数決定問題においてめざましい進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
モジュレーション空間に関しては、(錐上の斉次な)正準変換がモジュレーション空間上で閉じているか?モジュレーション空間上で非線形作用が閉じているか?といった基本的な問題が未だに未解決である。これらは、定量的な相空間解析あるいは非線型問題への応用上それぞれ重要な課題であり、引き続き取り組んで行きたい。また、シュレディンガー方程式の時空間評価式のもう一つの重要な例としてストリッカーツ評価式が知られているが、これに対する最良定数決定問題は依然として未解決な部分が多い。今後はこの方面の進展も目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究成果の口頭による公表を目的として、ナハリヤ(イスラエル)、クラクフ(ポーランド)、ソウル(韓国)における各国際研究集会に出席し講演することを予定している。また、関連する研究者との意見交換を目的として、京都大学数理解析研究所および名古屋大学において研究集会を組織する予定である。その際、海外からも研究者を数名招聘する。次年度の研究費は、概ね以上の目的のための旅費として使用される。
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