研究実績の概要 |
この研究は、偏微分方程式論に於いて特に解の定量的な情報(Lp型評価式など)を相空間解析により導き出すための、包括的で新しい方法論を構築することを目指すものである。さらには、こうして得られた方法論を非線形問題などに応用し、変数係数の場合など方程式の一般化へのブレークスルーの可能性をも探るものであった。 今年度の成果としては、まずは非斉次方程式に対する平滑化評価式の正準変換による導出に関する次の論文を公表した: M. Ruzhansky, M. Sugimoto, Smoothing properties of inhomogeneous equations via canonical transforms, Rend. Sem. Mat. Univ. Politec. Torino 70 (2012), 165-182. 刊行元の事情により発行年度は 2012 年となっているが、実質的には本年度の公表である。この問題に関しては、これまで斉次方程式の場合には比較原理を合わせ用いることによりある程度の結果が得られていたが、非斉次方程式の場合には比較原理が確立されておらず、ここでは正準変換の方法だけで何処まで結果が得られるのかについて論じている。 また、フーリエ積分作用素のL2有界性などを論じる際に相関数の導関数が与える写像の逆写像を考察する必要が生じるが、最も標準的であるはずの斉次な相関数の場合においては、原点での特異性のために逆写像が大域的に存在するかは必ずしも自明ではない。この問題に関して一つの解決策を提示する論文を作成し、Bull. Math. Sci. 誌において公表した。
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