研究課題/領域番号 |
23654057
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
利根川 吉廣 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80296748)
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キーワード | 極小曲面 / 安定性 / バリフォールド |
研究概要 |
今年度は引き続きJon Pittsによる局所的安定性を持つ極小曲面の構成方法についての詳細な理解を進めるとともに、リプシッツ連続変形下で面積最小性をもつ一般化された極小曲面についての研究を行った。これら概念は1970年代にFred Almgren等が中心となって発展したものであるが、その後の進展があまり進んでいない分野である一方、近年Wilmore予想解決に大きく役立つなど、その重要性は高いものである。平均曲率流のバリフォールド解自体は動的な問題であり、当初静的な問題に対しての概念である面積安定性とは無関係なものと考えていたが、平均曲率流の特異点解析においてある種の動的安定性があることが望ましい事が判明し、カレント・バリフォールドペアを応用した観点で解の構成を行うことを着案、準備的な研究を行った。 研究活動の一環としてNeshan Wickramasekera氏(ケンブリッジ大学)を招聘し、安定的な極小曲面の正則性理論についての研究打合せを行い、Xiaofeng Yang氏(南カロライナ大学)を招聘し、特異点集合を許す2相流体界面の数値計算について意見交換を行った。またRobert Hardt氏(ライス大学)を訪問し、プラトー問題に関する最近のBrakke等によるアプローチについて情報交換を行った.変分問題の分野での世界的研究拠点であるマックスプランク研究所やデジョルジセンターで開催された国際研究集会において招待講演し、また日本数学会年会で総合講演を行うなど、活発な研究交流活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初考えていなかった、一般化された平均曲率流の解の構成と、極小曲面の安定性との関係が見えてくるなど、予想していなかった知見が得られた。これらに関してはまだ具体的な研究成果として結果は出せていないが、今後極めて大きく挑戦的なテーマになりうるものであり、課題に相応しい発展であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
定常のカレント・バリフォールドペアの進展を目指しつつも、むしろその動的な問題の枠組みにおいてより将来発展性があると思われるテーマが見出された為、25年度はカレント・バリフォールドペアの観点から平均曲率流を構成することを予定する。バリフォールドの枠組みではBrakkeが平均曲率流を構成しているが、それを新しい観点から見直す。これらについて利根川は極めて高い専門性を有しており、高い確率で成功する見込みがあるが、一方で構成は高度に技術的であることが見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の研究打合せ・研究発表および研究者招聘を予定する。1.幾何学的測度論の専門家であるRobert Hardt氏(ライス大学)を訪問し、カレントおよびバリフォールド理論について研究打合せを行う。2.Giandomenico Orlandi氏(ベロナ大学)を招聘し、変分法解析について研究打合せを行う。3.第2回環太平洋数学会議(上海交通大学)において招待講演を行う。4.PDE解析研究集会(SIAM主催、フロリダ)において招待講演を行う。
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