研究課題/領域番号 |
23654059
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 卓克 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20224107)
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研究分担者 |
永井 敏隆 福岡大学, 理学部, 非常勤講師 (40112172)
黒木場 正城 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60291837)
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キーワード | 移流拡散方程式 / 非圧縮性粘性流体 / 退化移流拡散方程式 / 最大正則性原理 / ハーディー・リトルウッドの不等式 / 最良定数 / 線型熱方程式 / 斉次Besov空間 |
研究概要 |
移流拡散方程式の時間局所適切性は, その解析的構造が2次元非圧縮性粘性流体の渦度方程式とよく似ており, 特に単極型問題ではその局所適切性の限界空間が斉次Besov空間の枠組みで知られていた. ここでは双極型問題に対して, 時間局所可解性が単極型とは異なる次数の斉次Besov空間で臨界となり, 非圧縮性粘性流体の問題と異なった, より狭い空間で非適切となることを岩渕 司氏と証明した. 退化移流拡散方程式の非線形拡散指数の臨界値に着目し, 非線形拡散指数の L^1臨界指数2-2/nと, いわゆるSobolev 臨界指数2- 4/(n+2) の場合はこれまで良く研究されてきたが, それらの中間の指数をもつ場合は保存量との相性の問題から大域的な弱解の挙動の分類の閾値について明確な結果が得られていなかった. 中川和重氏と共同で君島 淳氏の得ていた部分的な結果を精密化し, これらの臨界指数の中間の指数の場合には初期条件のL1とentropy汎函数のあるべき乗凸結合により弱解の大域的な挙動が分類されることを示し, その臨界値が一般型Hardy-Littlewood-Sobolevの不等式の最良定数で顕わに与えられることを示した. Danchinにより示された放物型方程式の最大L1正則性を再考し, 特に初期条件への時間変数のトレースに相当する最大正則性原理成立の必要性を清水扇丈氏との共同研究で示した. これにより, 時間L1の最大正則性原理は初期値対して厳密に実補間空間に属す場合のみ成立し, それより改良できないことがわかる. また外力に対するDanchinによる証明の別証明を空間積分指数pが1より小さい場合の評価も得られる. さらに空間変数にのみ依存する変数係数を主要部にもつ線型熱方程式の解に対して最大L1正則性を証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初得られるものと見込んでいた, 退化放物型移流拡散方程式の臨界指数と臨界値の周辺の解の漸近挙動を証明する上で, 空間遠方での挙動の制御がこれまでに知られている手法では困難であることが判明した. このため研究方針を変更し, 空間遠方での制御を異なる手法に求めることとした. このため研究に遅れが生じた. また研究分担者の永井敏隆氏の健康上の理由により一定期間, 研究計画を変更し主目的のための予備研究を実施した. これにより周辺の研究を精査され, コアとなる研究部分での見通しが立ち, 永井氏の参画を待って研究を継続することとした.
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今後の研究の推進方策 |
退化放物型移流拡散方程式の臨界指数と臨界値の周辺の解の漸近挙動を証明する上で, 空間遠方での挙動の制御がこれまでに知られている手法では困難であることが判明した. この点を改善するべく, 球対称化の方法などの手法を通じて問題点の解消を目指している. 一方主要部が退化しない問題については, 分担者の永井敏隆教授との共同研究で, 臨界初期値である初期総質量が8πの場合の初期条件がラドン測度の場合の時間大域的可解性を得られる見通しを得た. この方針に添って次年度中に成果をまとめ研究集会を開催し発表する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初得られるものと見込んでいた, 退化放物型移流拡散方程式の臨界指数と臨界値の周辺の解の漸近挙動を証明する上で, 空間遠方での挙動の制御がこれまでに知られている手法では困難であることが判明した. このため研究方針を変更し, 空間遠方での制御を異なる手法に求めることとした. このため研究に遅れが生じた. また研究分担者の永井敏隆氏の健康上の理由により一定期間, 研究計画を変更し主目的のための予備研究を実施した. これにより周辺の研究を精査され, コアとなる研究部分での見通しが立ち, 永井氏の参画を待って研究を継続することとした. 当初予定していた昨年度中に質量輸送問題に関する実解析的研究のworkshop を熊本大にて開催し、本研究における実質的な検討をおこなう. 関連研究者を九州に招へいし議論をおこなうための旅費を500 千円予定する. また会議費60 千円を予定する. そのほか分担者との論文作成に主な研究活動を集約する. 永井敏隆, 黒木場正城, の仙台と広島への打ち合わせ出張旅費を分担金として配分する. 研究成果報告研究分担者らと共同で研究成果を分析し, 分担者と連携者及び研究協力者(三沢正史・小林孝行・川下美潮・隠居良行・加藤圭一・竹田寛志) を交えて口頭発表により成果発表をおこなう.
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