研究課題/領域番号 |
23654062
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西畑 伸也 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80279299)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | オイラー方程式 / ポアソン方程式 / 双曲型保存 / ボーム・シース条件 / 境界層 |
研究概要 |
本研究課題は、プラズマ物理に現れる双曲-楕円型非線形偏微分方程式系に対する時間大域的可解性と、解の漸近挙動を解明することを目的としています。とくに、ボーム・モデルと呼ばれるオイラー方程式とポアソン方程式の連立した双曲-楕円型方程式系を、主な研究対象としています。ボーム・モデルに対するこれまでの研究では、プラズマ物理学でシース(鞘)と呼ばれる境界層は、数学的には半空間上の平面定常解と理解される現象であることを示し、シース形成の条件として知られていたボーム・シース条件が、定常解が存在して漸近安定になる為の十分条件であることを証明しています。さらに、線形化方程式を解析することで、ボーム条件はまた必要でもあることを示唆する結果も得られています。また、初期条件に応じた定常解への収束の速さも求めました。 これらの研究を発展させ、プレ・シースと呼ばれるシースとプラズマつなぐ中間領域は、ボーム・モデル対して電位準中性を仮定して得られる双曲型方程式系(ラングミュア・モデル)の希薄波に対応することが、時間大域解が存在した場合に解の取りうる漸近状態を解析することで明確になりました。一方、数値計算による解析では、この結果は空間次元が2以上で初めて成立し、空間次元を1とした場合には特殊な初期条件以外では成立しないことを示唆する結果も得られました。したがって、空間次元を1とした時、解は有限時間で爆発し時間大域的には存在しないことが予想されます。こうした空間次元に応じた解の挙動の違いを解明し、空間次元が2以上ならば漸近挙動が定常解で与えられることの証明が当面の課題となります。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要で述べている通り、プレ・シースに関する研究の成果として、空間次元に応じて解の挙動が異なることを示唆する結果が得られています。この研究課題は本年度着手したことを勘案すると、1年間の成果として十分なものであると思われます。
|
今後の研究の推進方策 |
プレ・シースと呼ばれるシースとプラズマつなぐ中間領域は、ボーム・モデル対して電位準中性を仮定して得られる双曲型方程式系(ラングミュア・モデル)の希薄波に対応することが、解の取りうる漸近状態を解析することで示されています。一方、数値計算による解析では、この結果は空間次元が2以上で初めて成立し、空間次元を1とした場合には成立しないことを示唆する結果も得られています。したがって、空間1次元では、解が爆発し大域解が存在しないことが予想されます。こうした、この空間次元に応じた解の挙動の違いを数学的に解析し、シースからプラズマに至る遷移の様子を解明することが当面の課題です。さらに、ボーム・モデルを一般化した双曲-楕円方程式系に対する研究に着手する予定です。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題で取り扱われるオーラー・ポアソン方程式(ボーム・モデル)は双曲-楕円系であり、エネルギー形式を利用した積分量の計算に加えて、線形化方程式の基本解の評価や、楕円型方程式の解析に頻繁に用いられる幾つかの不動点定理等、様々な数学的手法を組み合わせる事が必要となります。従って、こうした分野を専門とする数学者との研究交流は、研究を推し進める上で不可欠です。さらに、プラズマ物理の研究者との交流も必要となります。その為、様々な研究集会に出席・発表を行うと共に、研究代表者自身も研究集会を主催して研究上の交流を図ります。こうした研究交流の為に、次年度を通して研究費を使用します。あわせて、数理モデルの数値スキームの研究の為、コンピューター・数値解析ソフト等に関連する費用も随時必要となります。
|