研究概要 |
本年度は、昨年度の研究に引き続き、ユークリッド空間に於ける自己相互作用を持つ所謂藤田型の非線型熱伝導方程式について研究した。特に初期値問題の正値解の爆発現象の解析について研究を行い、爆発方向を初期データによって特徴付けた。藤田型方程式の解が爆発する事自体については、約50年前の藤田宏の先駆的研究以来、良く知られており、Friedman, Kohn, Weissler, 儀我、柳田、溝口らの大きな寄与によって、爆発解の形状など空間的振無いについては精密な解析が進んでいる。一方、その爆発時刻が初期条件にどの様に依存するのかと云う問題については、LeeとNiの結果(Trans. AMS, 1992)とGuiとWangの結果(JDE 1995)のみが知られているところであるが、その仮定として、初期条件の空間遠方での挙動に極めて強い条件を課したものであり、充分解明されているとは言い難い。本研究では、初期函数の空間遠方での挙動について、単位球面上に射影した下極限函数に着目し、その球面平均が爆発時刻の上からの評価を具体的に与える事に成功した。より具体的には、p冪乗で表される非線型項の場合、球面平均の(1-p)乗で爆発時刻は上から評価される事を証明した。先行結果に課されていた仮定の一様性・等方性を外し、爆発現象が常微分方程式的構造に支配されている様子を明らかにした。更には解の爆発方向を単位球面上で特定する方法論を構築し、初期データとの関連を明らかにした。
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