研究課題/領域番号 |
23654065
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 哲生 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10126196)
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研究分担者 |
中本 泰史 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (60261757)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 系外惑星科学 / 宇宙物理学 |
研究概要 |
系外惑星大気における光の屈折と分散を含む星の光の伝搬の物理を明確にした上で,トランジット観測で期待される下記(2) に記した新しい効果の予測,観測のためのこれらの効果の具体像の提供と観測の提案,および観測から惑星の大気や本体に関する情報を引き出す解析方法の開発を行うことを目的としている.これらを通じて,系外惑星大気科学と言うべき新しい分野の開拓の糸口としたい.特に以下の項目を重点的に解明し,今後の新たな観測の提案につなげたい.1) 惑星サイズの見かけの増加効果2) 光度曲線のカラー観測から大気構造情報を得る手法の開発と展開3) トランジット惑星に付随する像の予測本年度は大気中の光の伝播も定式化を通じて,大気を通過してくる光線の屈折角の精密な公式を導出した.従来の表式は小さいインパクトパラメータで入射する場合に精度が悪くなるのに対して,この公式は小さいインパクトパラメータにおいても精度のよい屈折角を与える.これは本研究の基礎となる.また(2)に関連して,トランジット時の高度曲線からスケールハイトを決定する方法論を構築した.加えて,(1)についてはレイトレーシングの計算をシンプルな構造をもつ等温静水圧平衡にある大気について行い,惑星サイズの見かけの増加の効果の系統的研究を行いつつある.これについては観測波長による差異の計算も行った.結果の一部は国内外の学会,シンポジウムにおいて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目1),2)についての計算の基礎固めはほぼ終了した.とくにこれらを解明するための方法論と手法は今年度で完了した.特にトランジット惑星の光度曲線とその波長依存性,大気構造,特にスケールハイトを観測から導出する方法論については,従来にないまったく新しいアイデアであり,これの具体化を図ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究項目(3)を重点的に展開する.その予備的研究にはすでに着手している.また1),2)についても,より現実的な系について精密な検討を行う.このため広範なパラメータ空間での計算を本格的に展開する.また観測可能性をより具体的に追求するため,観測家との連携を強化し議論を促進する.これらの結果の内外への発信をより積極的に行うとともに,成果のまとめを行うことを通じて,系外惑星大気光学に基礎作りに寄与したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には観測家との連携強化,および分担者とのより密接な議論のための旅費を多く計上する.なお分担者における本年度の繰越状況は以下のとおり(代表者繰越額はゼロ):・成果報告・情報収集のために参加予定であった国際会議(2012年3月開催のLPSC)を,より高い効果を求め2012年4月開催の国際会議(EGU)に変更した.・使用する計算機を,当初予定よりも安く導入できた.余裕が出た予算は計算力向上のため計算機増設に使用する予定であるが,次年度に必要な高速大容量計算研究を考慮すると,H24年度導入の方が効果が高いと判断した.分担者において今年度繰越分および次年度配分予定額(30万円)を下記の要領で使用する予定である.・海外旅費:400,000円,・国内旅費:106,848円,・計算機購入:270,000円.計:776,848円
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