本研究は、系外惑星大気における光の屈折と分散を含む星の光の伝搬の物理を明確にした上で,トランジット観測で期待される下記(2) に記した新しい効果の予測、観測のためのこれらの効果の具体像の提供と観測の提案、および観測から惑星の大気や本体に関する情報を引き出す解析方法の開発を行うことを目的としている。これらを通じて、系外惑星大気科学と言うべき新しい分野の開拓の糸口としたい。 昨年度の研究から、本研究で予言される効果は現在の系外惑星観測では分解能等の制約から現状では困難であることがわかった。これを克服するため、本年度は太陽系天体の観測の解釈を重点的に研究した。木星のガリレオ衛星が木星の影に入る際に幾何学的な影の境界にくらべて長く明るさを保つ現象が観測されている。この現象を,本研究で開発を進めた理論モデルや計算式を用いて木星大気による屈折と減光の効果として理解できるかどうか,検討を行った。ある程度までは理解できることがわかったが,観測結果と理論計算結果の間にはまだ差が残ることもわかった。理論モデルには考慮されていない効果がまだ効いているようである。このことは,系外惑星の影を観測するトランジット観測の結果を解釈する上で,重要な示唆を与えるものと思われる。結果は国内外の学会、シンポジウムにおいて発表した。 加えて、平成24年8月に神戸大学惑星科学研究センターにて国際研究集会 Cosmic Dust 2012 を開催した (https://www.cps-jp.org/~dust/Welcome_V.html)。参加者数12カ国(日本を含む)からは72名(内、海外から37名)であった。この会議では系外惑星を含む宇宙のダストに関して親密な議論を行った。
|