研究課題/領域番号 |
23654067
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷森 達 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10179856)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ガンマ線バースト / Poupulation-III / コンプトンカメラ / 気球実験 / 小型衛星 / 宇宙初期 / ガンマ線天文学 |
研究概要 |
今、最遠方天体探査はガンマ線バースト(GRB)がプローブとなる場合が多く、特に今後z>10以上の宇宙初期星の発見にはGRBが最も有望なプローブであるが、現在のX線観測による手法ではz~10程度が検出限界であり、z>10のGRBを捕らえる手法がまだ開発されていない。我々はGRBの主放射領域であるサブMeVガンマ線領域でガンマ線毎に方向を捕らえる電子飛跡検出コンプトンカメラ(ETCC)を世界に先駆け開発し、z~20のGRBからのガンマ線を検出しオンライン・アラート発信の可能性を得た。ETCCの最適化を行いz~20までの最遠方GRB検出手法を提案且つ検証する。この申請では、今、基盤研究S「広視野ガンマ線カメラによるMeVガンマ線河内天体気球観測」(代表谷森達)で開発する気球搭載用ETCCの気球実験を、基盤S終了後にさらに北極周回実験に発展させ、200時間程度の長時間観測を現在計画しているが、その観測中にETCCで典型的GRBが数個検出できる可能性がある。3-4年間に10個程度のGRB検出が期待出来、この提案の検証が可能となる。しかし現時点ではETCCはGRBに対応していない。データ収集の高速化、シンチレーター独自のデータ収集によるGRBスペクトル決定などGRBに対応できるETCCに改良するための基礎開発を行う。これがこの申請の内容であるが予算が申請の半分程度となり、トリガー関係の開発は不可能と判断。まずはETCCによるGRB検証に不可欠な大規模な長時間気球実験を行うための国内および国際的グループ形成、またこの検出の可能性をより定量的に評価し、物理的な新規性がどの程度あるかを判断することに23年度は集中して研究を遂行した。具体的には以下の現在までの達成度に表記する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近、遠方GRBの中で宇宙最初の星として理論的に注目されながら超大型赤外線望遠鏡でも直接観測は困難と考えられているPopulation-IIIの星が,既存のGRBの数十倍の規模のGRBを起こすことが理論的に予想された。特にこのGRBの継続時間が1日程度と既存のGRBより圧倒的に長く、従来のX線によるバーストのピークを検出する手法では検出が不可能であることが議論された。ETCCはガンマ線毎に方向を決定するため、雑音領域を角度分解能程度の領域に限定出来、従来より2桁以上雑音除去が可能となり、長時間GRBの検出が大変有利であることに気がつき、理論家との議論を行う中で、その重要性が明らかになってきた。特に数時間以上継続する従来には無い新しいGRBが数個でも発見されれば、それはPOP-IIIの存在を直接証明できる唯一の観測となる可能性もあり、ETCCに重要な意味が出てきた。ETCCのこの可能性を、国際学会、海外のガンマ線観測に関係する機関(Ecole Politeh、スエーデン王立工科大、スエーデン宇宙科学研究所、UCバークレー校、UCサンタクルズ校)、国内の研究会等で講演、討論を行うことでETCCによる新しい遠方GRB検出法の理解、発展に努めてきた。一方、今年度、国内のGRB関係研究者が集まり、JAXAが公募している小型衛星計画にGRB探査衛星を提案することとなり、金沢大理学部物理、米徳氏を代表として小型衛星計画へGRB探査衛星HiZ-GANDUM計画を提案した。この衛星の搭載可能な装置の一つとして、>10以上の最遠方GRB探査を可能にする装置としてETCCによるGRB探査が含まれることとなった。さらに次年度の計画に示すようにETCCのGRB探査は海外でも認知され、国際学会等の口頭講演に採用され、さらに招待講演の依頼もあり、グループ形成への充分な下地が出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に引き続き、多くの関連国際・国内学会やセミナーでこのETCCによる最遠方GRB,特にPOP-IIIの星からの長時間GRBという新しいタイプのGRB検出がPOP-III存在の確実な証拠となることを広く世界に周知させ、批評を受けながら、この手法の確度を上げていく。さらに基盤研究Sによる気球装置は今年秋までには組み上げを終了し、性能評価を行う予定である。この具体的な性能なども含め、ETCCで将来達成可能な有効面積、角度分解能などを推測し、より確度の高い見積もりを行い、GRB検出可能性をさらに具体的な提案としていく。さらに北極での気球観測、JAXAの小型衛星、中型衛星などの条件でETCCを用いた場合のGRB検出能力の予想を行い、まとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は現時点で、6月、ロシア・モスクワでのGRB国際会議での招待講演、7月にSPIE、COSPARの宇宙の観測装置についての主要な国際会議でETCCの成果と可能性を発表することになっている。特に6月のモスクワでは最近設立された、GRB研究を目的としたモスクワ州立大学のExtreme Universe LaboratoryがこのETCCに興味を持ち、招待されたものである。ロシアはMeVガンマ線天文学の欧州での中心的な存在であり、INTEGRAL衛星に多大な寄与を行っている。このETCCの次世代GRB探査の可能性を議論するのに絶好の機会であり、今後の国際協力に繋げてきたい。これら夏までに世界のMeVガンマ線探査装置の主要な開発グループ等と多くの議論を行い、ETCCのGRB探査の可能性について批評を受けられると考えている。夏以後は金沢大米徳氏と共に、今年度前半で得た現在の次期GRB検出の方向性を踏まえ、国内での小研究会を企画し、小型衛星等の具体的な方向性を固めていきたい。
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