研究課題/領域番号 |
23654067
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷森 達 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10179856)
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キーワード | ガンマ線バースト / Poupulation-III / コンプトンカメラ / 気球実験 / 小型衛星 / 宇宙初期 / ガンマ線天文学 |
研究概要 |
今最遠方天体はガンマ線バースト(GRB)がプローブとなる場合が多く、特に今後z>10以上の宇宙初期星の発見にはGRBが最右翼であるが、現在のX線観測による手法ではz~10程度が検出限界であり、z>10のGRBを捕らえる手法が無い。我々はGRBの主放射領域であるサブMeVガンマ線の方向を捕らえる電子飛跡検出コンプトンカメラ(ETCC)を世界に先駆け開発し、z~20のGRBからのガンマ線を検出しオンライン・アラート発信の可能性を得た。ETCCの最適化を行いz~20以上の最遠方GRB検出手法を提案且つ検証する。この申請では、基盤研究S「広視野ガンマ線カメラによるMeVガンマ線河内天体気球観測」(代表谷森達)で開発する気球搭載用ETCCの気球実験を、基盤S終了後にさらに北極周回実験に発展させ、200時間程度の長時間観測を現在計画しているが、その実験中にETCCで典型的GRBが数個検出できる可能性が高い。3-4年間に10個程度のGRB検出が十分期待出来、この提案の検証が可能となる。しかし現時点ではETCCはGRBに対応していない。データ収集の高速化、シンチレーター独自のデータ収集によるGRBスペクトル決定などGRBに対応できるETCCに改良するための基礎開発を行う。 これがこの申請の内容であるが予算が申請の半分程度となり、トリガー関係の開発は不可能と判断。まずはETCCによるGRB検証に不可欠な大規模な長時間気球実験を行うための国内および国際的グループ形成、またこの検出の可能性をより定量的に評価し、物理的な新規性がどの程度あるかを判断することに23年度は集中して研究を遂行した。具体的には以下の現在までの達成度に表記する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近、遠方GRBの中で宇宙最初の星として理論的に注目されながら超大型赤外線望遠鏡でも直接観測は困難と考えられているPopulation-IIIの星が,既存のGRBの数十倍の規模のGRBを起こすことが理論的に予想された。特にこのGRBの継続時間が1日程度と既存のGRBより圧倒的に長く、従来のX線による手法では検出が不可能であることが議論された。ETCCはガンマ線毎に方向を決定するため、雑音領域を角度分解能程度の領域に限定出来るため、従来より2桁以上雑音除去が可能となり、長時間GRBの検出が大変有利であることに気がつき、理論家との議論を行う中で、その重要性が明らかになってきた。特に数時間以上継続する従来には無い新しいGRBが数個でも発見されれば、それはPOP-IIIの存在を直接証明できる唯一の観測となるかもしれず、ETCCに重要な意味が出てきた。24年度には基盤SのETCCがほぼ完成、電子飛跡再構成法の改良により、電子飛跡検出感度が大幅に改善、ETCC内で起こるほぼすべてのコンプトン事象の再構成が可能となり、この気球実験の最終予定感度を当初から2倍程度良い1cm2を得た。今後のガス種圧の調整で10cm2の有効面積が充分実現出来ることがわかった。この有効面積があれば典型的なGRBに足して100keV以上のガンマ線1,000個程度の検出が可能で、充分イメージングトリガー法を気球実験で評価出来ることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度には気球用ETCCのガス圧調整を行い、より高い有効面積を得る開発を行う。また加速器により宇宙環境下での雑音・信号分離能力評価行い、この装置の性能を詳しく評価し、気球実験で予想される検出感度の確度を従来に無いほど高める。このデータに基づき、北極での気球観測、JAXAの小型衛星、中型衛星などの条件でETCCを用いた場合のGRB検出能力の予想を行い、まとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進で書いたように25年度では24年度に実現した気球用ETCCの予想の10倍以上の高性能化実現の可能性をさらに繊細に調べ、確度の高いGRB検出予想を行う。この近い将来気球実験でGRBガンマ線イメージングトリガー実現はGRBおよびMeVガンマ線天文学分野では画期的であり、関連国際・国内会議でその結果を迅速に報告する必要がある。その旅費として使用予定である。
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