研究課題/領域番号 |
23654072
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
永岡 賢一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (20353443)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 天文学 / 流体力学 / プラズマ |
研究概要 |
近年、「ようこう」、「ひので」による太陽観測の成果により、太陽対流層の大規模流れ場の構造が明らかになってきた。磁場の発生機構(ダイナモ効果)や黒点活動周期(11年周期)に、対流層の流れ場の構造が深く関与していると考えられ、注目を集めている。球殻対流層の実験は、球対称な重力場の模擬が難しく、遠心力(2次元系)を使ったものに限られてきた。本研究では、電気対流を用いることで球対称な対流場(3次元系)を実現し、それに回転を加えることで、太陽対流層の模擬実験に挑戦する。自発的な流れ場構造を太陽対流層と同じ幾何構造で行うことにより、太陽対流層の流れ場構造の理解を進展させ、磁場発生機構の解明に貢献することが本研究の目的である。本研究は、2年の期間で、回転球殻シェル乱流の流れ場の自発的構造形成の実験を実施する計画である。その初年度である平成23年度は、(1)回転駆動架台制作、(2)平面電極制作、及び(3)2次元乱流実験を計画し、これを実行した。年度前半は、新規に立ち上げる実験であるため、液晶乱流実験の調査、実験室の確保、及び、機器整備を行った。さらに後半では、電極セルの製作を実施し、平面電極内に生成した乱流のレイリー数依存性を確認することに成功した。その結果を平成24年3月に開催された天文学会にて、報告を行った。また、回転ステージの設計・製作も実施することができたため、計画した内容を年度内にほぼ実行することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2年の期間で、回転球殻シェル乱流の流れ場の自発的構造形成の実験を計画している。初年度である平成23年度は、(1)回転駆動架台制作、(2)平面電極制作、及び(3)2次元乱流実験を計画した。これに対して、順調に進捗し、2次元乱流生成とそのレイリー数依存性の確認を行うことができた。これらは、実験の初期結果として、3月に開催された日本天文学会で報告することができた。以上の理由により、本研究は計画通り、順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究が順調に進展したため、当初計画をそのまま実施できる状態にある。2年目となる平成24年度には、(1)流れ場計測技術の開発、(2)球殻シェル電極制作、(3)3次元乱流実験を計画している。具体的には、(1)電気対流中に微粒子を混入して、動画計測の画像処理を行い、粒子追跡からその場の流速測定穂を開発する。これにより、乱流中の流れ場の構造形成を観測できるようになる。(2)球殻乱流セルを製作するときに、セルの厚さと球の半径のパラメータが重要になる。ガラス可能の精度の範囲内で、最適な設計を検討し、セルの製作を実施する。これには、平行平面セルの実験での詳細な検討が必要になる。(3)回転球殻乱流場の実験を行い、自発的な流れ場構造形成の観測を目指す。系の回転数が非常に重要となることが予測されているが、ロスビー数が1以下の領域では、巨視的な流れ場が形成されると予想されている。そのような構造形成のロスビー数依存性、レイリー数依存性などを明らかにすることで、回転乱流の流れ場構造形成に与える回転の効果を検証することが最終目標である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、予算額が小額であるため、消耗品レベルで速度場計測や球殻セル製作のための予算執行を行う。また、本研究計画の最終年度であるため、結果をまとめて米国物理学会、及び日本物理学会で報告するための予算を計上している。平成23年度の予算の繰越が生じたが、これは3月末の学会出張に関わる経費の振込みが4月になったためであり、予算執行予定に大幅な変更はない。
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