太陽対流層の模擬実験を実験室で行うために、本研究では電気対流乱流を用いてその基礎実験を行った。課題採択において、補助金が申請額の約5割であったため、他の助成金に頼ることになり、研究の進捗は、補助金額の大きさから科研費による寄与は相対的に小さかった。ただし、科研費に採択されたことにより、本研究をトリガーしたことへの意味は大きかった。 2年間の進捗は、電気対流乱流実験をゼロから立ち上げ、静止系で平面内の対流を対象にした実験が可能となった。特に1年目は、液晶セルの製作と計測機器整備が主な進捗であった。最終年度の2年目には、実験機器の整備と計測技術の獲得の積み重ねにより、電気対流による乱流制御が可能となった。この研究で実施した電気対流乱流実験では、乱流状態を特徴付ける無次元数であるレイリー数(又は、レイノルズ数)を連続的に3桁にわたって制御することが可能であることがわかった。この良好な制御性を利用して、乱流の時間・空間スペクトル構造の無次元パラメータ依存性を示した。一方、乱流中に微粒子を混入させることで、局所的な乱流速度場を可視化することにも成功した。その結果、乱流による粒子拡散の評価が可能となり、初期解析では、乱流輸送がHurst指数~0.5のランダム拡散であることがわかった。これらの結果を基に、科研費終了後も実験を継続し、回転系に展開する。これまでの実験で得られている乱流特性に与える回転の影響を実験的に調べる予定である。 本科研費により、全く新しい研究を立ち上げるきっかけを得ることができたことが最大の成果であった。実質的には、他の研究助成を獲得する必要があったが、挑戦的萌芽研究としては、成功であった。
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