200-300MeV/核子の重イオンビームを用いて不安定核の原子核構造を調ベる場合、標的での核反応から放出される入射核破砕片の粒子識別と4元運動量の測定が必要不可欠である。この為には運動量、電荷の測定に加え高精度の全エネルギー測定が必要になるが、質量数100付近では約30GeVの全エネルギーを0.2-0.3%(rms)の精度で測定する事が必要になり非常に困難である。一つの方法として稀ガスを固化してその発光を測定する方法が考えられる。低価格のアルゴンは発光時定数が長く又発光波長が短く光検出が難しい。一方キセノンは 短い時定数を持ち発光波長も長く光検出には適しているが高価である。アルゴンに微量のキセノンを混合すると、価格を低くおさえたまま、発光時定数を短くしかつ発光波長を長くすることが可能であると考えられる。本研究の目的は、アルゴンに微量のキセノンを加えた混合ガスを液化又は固化させた検出器を製作し、その発光を測定する事により重イオンの全エネルギーを高精度で測定する方法を検証することである。 検証の為に、アルゴン、又はアルゴンとキセノン混合ガスを液化又は固化する冷却/混合ブロック、それを液体窒素で冷却する液体窒素リザーバーとコールドフィンガー、混合ブロックやコールドフィンガーなどを収容する真空箱、ガスの混合と流量調整を行うガス処理系を製作した。液化/固化する領域は直径30mm、厚さ10mmの部分である。最初に、高価なキセノン無しの状態でアルゴンの液化と固化実験を行った。アルゴンの液化は問題なく行えた。さらに円柱の周辺部分を固化する事には成功したが、まだ全領域を一様に固化する事には成功していない。この2年間の研究で、必要な装置を完成しアルゴンの液化と部分固化には成功したが、最終目標であるアルゴンとキセノン混合ガスを液化/固化し、そこからの蛍光を観測する段階までには至らなかった。
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