双対性の解明は弦理論の最重要な課題の一つであり、安定状態の数え上げの母関数を知ることが極めて重要である。最近、私は寺嶋郁二氏(東京工業大学)との共同研究で、クラスター代数の exchange graph 上のループを表す箙変異の列 (quiver mutation loop) に対し、分配 q 級数と呼ばれる母関数を定義した。これはペンタゴン(五角形)関係式や共形場理論のフェルミ型指標公式との関係、保型性などの著しい性質を持つ。分配 q 級数は組合せ論的データのみから定義され、系の詳細には依らないので、双対性の背後にある共通の性質や量子化の機構を追究する枠組みとして役立つと期待される。
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