研究概要 |
ワームホールは、離れた時空間を連結するアインシュタイン方程式の解である。しかしながら、その存在は全く不明で、あくまで理論的な研究の対象でしか無かった。重力マイクロレンズ効果を利用した、ワームホールの観測的検証法が提案さたことを受けて、理論・観測で何ができるか検討し、実際にワームホールの検証を行ってその存在量に制限を付けることが本研究の主な目的である。今年度は、これまでの成果を物理学会等で紹介するとともに、10月27、28日に研究会「ワームホール:その理論と観測的検証可能性」を実施した。ここで、ワームホールに興味を持つ研究者が集まり、その研究成果を紹介し合った。主な成果としては、相対論的なアインシュタインリングを使ってエリスワームホールを区別する方法(Tsukamoto, Harada, Yajima, 2012)の導入、重力マイクロレンズ効果による減光は、エリスワームホールに特有のものではなく、特殊な時空構造を持つワームホールでは普遍的に見られることの証明(Kitamura, Nakajima, Asada, 2012)、ガンマ線バーストの重力レンズ効果(pico lensing)を利用したエリスワームホール探索法(Yoo, Harada, Tsukamoto, 2012)の導入などが上げられる。また、将来の位置天文衛星JASMINEでのワームホール探索の可能性やワームホールの安定性に関する研究などもあり、初めてのワームホール研究会として実り多いものであった。研究会と合わせて行った一般向け講演会では、高校生や大学生など120人あまりが参加し、活発な質疑応答が行われた。 その後、さらに研究が進展し、Yooらによってcm程度のエリスワームホールの存在量に制限が付けられ、さらにTakahashiらによって、10-10000pcの巨大エリスワームホールの存在量に制限が付けられた。
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