研究課題/領域番号 |
23654083
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 光廣 名古屋大学, 現象解析研究センター, 准教授 (90183889)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 原子核乾板 / 素粒子 / 宇宙線 / 放射線検出 |
研究概要 |
高感度の原子核乳剤の開発を名古屋大学の原子核乳剤製造装置を用いて行っている。本年度は感度向上のトライアルを行い、飛跡長100ミクロンあたり90個のグレインを記録できる乳剤をコンスタントに製造できるようになった。これはOPERA実験などに用いられている従来のものに対して約3倍の感度、目標の目安としている300グレイン/100ミクロンまであと約3倍のところに来ている。 また本年度は最終的な感度に効いてくる100ミクロンあたりに並ぶハロゲン化銀結晶の数を増やすために、粒子径の小さな銀塩結晶の合成を試みた。通常のゼラチンでは粒子径の小さなものを作るのは難しいが、PVAという高分子を少量分散させることによって、粒子径0.02ミクロンのものを安定に形成することも可能となった。これはPVAがハロゲン化銀の微結晶に吸着する結果、粒子の成長が抑制されるからと言うことがわかってきている。この製法により、放射線が貫くことができる微結晶の数を最大10倍とすることが可能となった。 今後ここのハロゲン化銀微結晶の感度調整を行うことにより、100ミクロンあたりに記録できるグレインの数のさらなる向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究を研究テーマとしている大学院生の努力と、スキルを持った富士フイルムのOB研究者の協力によるところが大きい。だいたい一月に一回の乳剤試作とその評価(電子顕微鏡など)をコンスタントにこなすことができており、試作-評価-次期試作へのフィードバックのルーチンをコンスタントに回すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の開発で可能となった微粒子のハロゲン化銀のサイズを変えながら、最終感度調整のための薬品量の最適化を図り、100ミクロンあたりに記録できるグレイン数を最大に持ってゆく。粒子径が小さくなると1個あたりに放射線が落とすエネルギーは少なくなり、結果として現像される確率は減るが、直線上に並ぶハロゲン化銀結晶の数は増加し、検出器の数は増える。このため最適サイズが存在すると考えられるので、そのサイズを探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に乳剤製造に使用する物品費、国内外の学会や研究会での発表、技術協力の謝金ほかに使用する。
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